アメリカの鉄道・バス業界は、大手企業が広範な路線網を持ち、貨物輸送と旅客輸送の両方で重要な役割を果たしています。環境への配慮や技術革新に注力しつつ、効率化とサービス向上を進めており、国際的な展開や業界再編も活発に行われています。また、長距離バスサービスも重要な交通手段として機能しており、格安で広範囲をカバーしています。
今回は、アメリカの主要鉄道・バス企業に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて12社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
読了時間の目安:5分
アメリカの鉄道・バス企業8選〜ローカル企業編〜
Union Pacific (ユニオン・パシフィック)
Union Pacificは、1862年に設立され、本社はアメリカのネブラスカ州にある。アメリカ西部3分の2にある23州を鉄道で結び、太平洋岸から中西部、南西部、中西部、メキシコ国境近くまで運行している、アメリカで最大手の鉄道会社のひとつである。
西海岸とメキシコ湾岸のすべての主要な港から東部の玄関口まで運行、カナダの鉄道と接続、メキシコの6つの主要な玄関口まで運行など、幅広くサービスを提供している。
2013年から2022年にかけて、アメリカの交通インフラをサポートするために、ネットワークと運営に約340億ドルを投資している。収益においても、2023年第3四半期の純利益は15億ドル、営業収益は59億ドルであった。また、2022年度の純利益は70億ドル、営業収益は249億ドルであった。
約510万ドルの地方補助金を寄付し、23 州にわたる543の非営利団体を支援した。さらに、債券の純収益5億9,080万ドルの100%を、自社の持続可能性への取り組みを支援するプロジェクトに割り当てた。
出典:https://www.up.com/index.htm
Amtrak (アムトラック)
Amtrak は、1970年に設立され、本社はアメリカのワシントンD.C.にある。46の州、コロンビア特別区、カナダの3つの州に21,000の路線マイルを持ち、毎日300本以上の列車を、最高時速150マイルで500以上の目的地へ運行している。また、17の州および4つの通勤鉄道機関において、州が支援する回廊サービスに選ばれている事業者である。
代表的な路線には、ボストンからワシントンD.C.までを結ぶ高速列車「アセラ・エクスプレス」や、シカゴからサンフランシスコまでを結ぶ列車「カリフォルニア・ゼファー」などがある。
2022年度の実績では、年間2,290万回利用され、平均して1日に62,800回以上利用されている。
これまでAmtrakは、温室効果ガス排出量を414,054 トン以上削減してきた。また、2045年まで温室効果ガス排出量をネットゼロにする目標を掲げている。
2023年Forbesの「女性のための最優秀雇用主リスト」に選出、障害者平等指数で100点中100点を獲得など、これまでも多くの受賞歴がある。
出典:https://www.amtrak.com/home.html
CSX (シーエスエックス)
CSXは、1980年に設立され、本社はアメリカのフロリダ州にある。主要事業として、鉄道輸送と不動産事業を展開している。
アメリカ東部を中心に、カナダのオンタリオ州とケベック州、大西洋岸、メキシコ湾岸、ミシシッピ川、五大湖、セントローレンス海路に沿った70以上の海、川、湖の港ターミナル、西部の鉄道との提携を通じて、太平洋の港にもアクセスできる。これらの鉄道網を通じて、鉄道・貨物輸送、複合一貫輸送、コンテナ船輸送、物流業務請負のサービスを提供している。
l2023年第3四半期の収益は、35億7,000万ドルとなった。また、2022年度の収益は149億ドルとなり、前年度と比較し19%増加した。
CSXは、現役・退役軍人とその家族への支援が評価され、第6回ペイトリオッツ・イン・ビジネス賞を受賞、従業員がCarry Forward 5Kに参加し、負傷退役軍人を支援するために74,000ドル以上を募金するなど、これまで支援活動に力を入れてきた。
出典:https://www.csx.com/
BNSF Railway
BNSF Railwayは、1995年に設立され、本社はアメリカのテキサス州にある。北アメリカで最も大きな鉄道ネットワークのひとつを運営しており、アメリカ西の2/3にわたって32,500マイルの鉄道を保有している。また、28の州と3つのカナダの州にまたがる約32,500マイルのルートを有す貨物鉄道会社である。
2023年の第3四半期の収益は18億ドルで、前年同期と比較し14%の約3億ドル減少している。また、40,000名の従業員を有している。
2023年WCAにより「多様性に優れたベスト企業」と「ミレニアル世代のベスト企業」、Forbesにより「女性にとって最も優れた雇用主」など、これまでも数多くの受賞歴がある。
芸術団体や社会福祉団体、大学の奨学金プログラムに資金を提供するBNSF財団は、コミュニティのサポートを強化している。2000年以来、BNSF財団は、サービスを提供する地域社会の教育、文化、その他の価値あるプログラムに、1億5,000万ドル以上を寄付してきた。
出典:https://www.bnsf.com/
Norfolk Southern (ノーフォーク・サザン)
Norfolk Southern は、1827年に設立され、本社はアメリカのジョージア州にある。主に貨物輸送サービスを提供しており、鉱石、石炭、穀物、自動車などの貨物を運搬している。また、鉄道とトラックなど他の交通手段の組み合わせたインターモーダル輸送にも注力している。
22州とワシントンD.C.にまたがる19,500ルートマイルの鉄道網と、800の工業用地、175の倉庫、43の港を接続している。また、1年間で機関車、貨物車、線路、橋などの設備に15億ドル投資している。
2023年第3四半期の収益は、7億5,600万ドルであった。また、2022年度の収益は127億ドルであり、過去最高を記録した。これは、前年度と比較し、14%の16億ドル増加した。
2007年には業界初の最高持続可能性責任者を任命し、2021年には2034年までにGHG排出量を削減する目標を設定した。
Norfolk Southernは、2023年に「アメリカで最も責任ある企業」に選出、Forbesにより「ネットゼロリーダー」に選出など、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.norfolksouthern.com/
Greyhound (グレイハウンド)
Greyhoundは、1914年に設立され、本社はアメリカのテキサス州にある。長距離バスを運行するアメリカで最大規模のバス会社である。
アメリカ全土とカナダ、メキシコの一部の都市を結び、アメリカ国内においてだけでも3,100路線以上が運行している。また、北米全土の2,300の目的地にサービスを提供しており、アメリカとカナダの年間約1,600万人の乗客がGreyhoundを利用している。
2010年には、プレミアム都市間サービスである Greyhound Expressを開始し、これまで北米の135以上の市場に急速に拡大してきた。また、農村部のコミュニティと接続するサービスであるGreyhound Connectも運営している。
Greyhoundは、家出者、ホームレス、搾取されているなど、危険にさらされている12歳から21歳の青少年を支援する唯一の全国的プログラムであるHome Freeプログラムを設立し、National Runaway Safelineと提携し、親、法的保護者、または代わりの安全な生活環境に行くための無料バスチケットを提供している。
出典:https://www.greyhound.com/
Megabus (メガバス)
Megabus は、東部、南部、中西部、西部、太平洋岸のアメリカと、カナダのオンタリオ州とケベック州で運行している高速バスおよび夜行バスである。
Megabusの本社は、アメリカのニュージャージー州にある。2006年からサービスを開始し、114都市を結ぶ544のバスルートと、669以上の運行サービスを提供している。年間1,000万人の乗客が利用しており、運賃は1ドルから購入可能という低所金で提供している。
Megabusを運営しているCoach USAは、北米における地上旅客輸送およびモビリティソリューションの大手プロバイダーのひとつである。また、アメリカとカナダの27か所で事業を展開し、3,000名以上の従業員と2,250台のバスを有している。さらに、アメリカとカナダ全土で毎年3,800万人以上の乗客が利用している。
環境に優しいサービスの提供として、二酸化炭素排出量を削減することを強化している。他の車両と比較し、1マイルあたりの二酸化炭素排出量が最も少ない。
出典:https://www.megabus.com/
Alaska Railroad (アラスカ・レイルロード)
Alaska Railroad Corporationは、1903年に設立され、本社はアメリカのアラスカ州にある。アラスカ州の南部にあるセワードとウィットイヤーからフェアバンクスまでを結ぶ鉄道である。主要事業の鉄道事業以外にも不動産事業、旅客や貨物サービスを提供している。
1914年から1985年までアメリカが所有・運営していたが、現在は州が所有する企業として、民間企業のように運営されている。また、毎年数百万トンの貨物が輸送され、50万人以上の乗客が利用している。
2022年度の収益は2億5,024万ドルであり、前年度の収益の1億9,800万ドルと比較し、増加している。
Alaska Railroad Corporationは、廃棄物の削減、汚染の防止、エネルギーの節約に継続的に取り組んでいる組織に表彰されるグリーンスター賞を、アラスカ州で最も早く受賞した鉄道のひとつである。具体的には、年間使用量 500,000立方フィートの天然ガスや、ボイラーで使用される水の約6分の1、化学薬品の約3分の1の危険物質の削減を実現している。
出典:https://www.alaskarailroad.com/
アメリカの主要鉄道・バス企業〜日系企業編〜
Central Japan Railway Company (JR東海)
JR東海は、1987年に設立され、本社は日本の愛知県にある。主な事業内容として、鉄道業、不動産業、更には海外事業も展開し、20社以上の子会社と18000名以上の従業員を有している。
2023年度第3四半期の収益は、4224億となった。また、2022年度の収益は1兆4,002億円であり、純利益が2,194億円であった。これは、前年度と比較し、49.7%増加している。
海外事業では、ダラス~ヒューストン間の約385kmを東海道新幹線型高速鉄道で結ぶ計画の「テキサスプロジェクト」や、ワシントンD.C.~ニューヨーク間を結び、500km/hで運転する超電導リニアシステムを展開する「北東回廊プロジェクト」などがあり、アメリカでの認知度や評価が向上してきている。
主要サービスのひとつである「スマートEX」では、訪日外国人向けサービス「Tokaido Sanyo Kyushu Shinkansen Online Reservation Service」として、英語版ウェブサイト及び専用のスマートフォンアプリでのサービスを展開しており、世界各国・地域から、出発前に自国で予約が可能となっている。
出典: https://jr-central.co.jp/
アメリカの主要鉄道・バス企業3選〜外資系企業編〜
Canadian National Railway (カナディアン ナショナル レールウェイ)
Canadian National Railwayは、1837年に設立され、本社はカナダのモントリオールにある。主に貨物輸送サービスを提供しており、鉱石、農産物、製品、原材料などの貨物を運搬している。
カナダとアメリカに20,000マイルのネットワークが跨がっており、大西洋、太平洋、メキシコ湾の3つの海岸を結んでいる。また、年間2500億カナダドル以上の商品を輸送している。
2023年第3四半期の収益は39.87億カナダドルで、12%の約5億カナダドル減少した。また、2022年度の収益は、171.07億カナダドルで、前年度と比較し、18%の約26億カナダドル増加した。
Canadian National Railwayは、先住民コミュニティとの関わりを高め、ビジネスチャンスを特定し、育成し、雇用促進を目的とし、110の先住民と約200のコミュニティ支援を強化している。また、先住民コミュニティとの関係をさらに強化するために、カナダ全土の先住民、イヌイットコミュニティの12人のリーダーで構成される新しい独立機関である先住民諮問委員会が設立された。
出典:https://www.cn.ca/en/
FlixBus (フリックスバス)
FlixBusは、2013年に設立され、本社はドイツのミュンヘンにある。主要事業として、長距離バス輸送サービスを提供しており、欧州や一部の国際路線で幅広い都市を結び、手頃な価格で異なる都市間を運行している。
世界25以上の拠点と40か国以上で事業を展開し、5,500名以上の従業員を有している。
2023年1月から6月末までに、世界中で 3,600 万人以上の乗客に利用され、乗客数は前年同期と比較し、53%増加した。また、総収益は8億6,000万ユーロであり、前年同期の5億5,700万ユーロと比較し、54%増加した。さらに、2022年の収益は15億ユーロを超え、過去最高となった。これは、前年の収益と比較し、185%増加しており、40か国の6,000万人以上の乗客に利用された。
2018年には、最初のグリーン長距離列車を運行し、全電気長距離バスのパイロットプロジェクトを開始した。2021年には、 EU初のバイオガス燃料長距離バスを発売した。2022年には、最先端の車両を使用し、818,000トンの二酸化炭素を削減した。
出典:https://global.flixbus.com/
Canadian Pacific Kansas City (カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ)
CPKCは、1800 年代に設立されたカナディアンパシフィック (CP) とカンザスシティサザン (KCS) の2つの鉄道会社が、2023年に合併して設立された。本社は、カナダのアルタ州にある。
北米初で唯一の国境を越えた鉄道ネットワークを持ち、20,000マイルのネットワークを通して、カナダ、アメリカ、メキシコ全土に必需品を輸送している。また、20,000名の従業員を有している。
2023年第3四半期の収益は、3.3億ドルであった。また、2022年度の収益は、前年の収益の80億ドルから10%増加した、88億1000万ドルとなった。
心臓血管研究や心臓病患者への最高の機器とケアに資金を提供するパートナーシップ、スポンサーシップ、活動、寄付を通じて、北米全土の成人と子供の心臓の健康を改善する取り組みのCPKC Has Heartは、2014年以来、北米全土のコミュニティへ3,600万ドル以上の資金調達を支援してきた。
出典:https://www.cpkcr.com/en
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。