アメリカの倉庫業界は、多様なサービスと技術革新を特徴とし、セルフストレージから法人向けまで幅広いニーズに対応しています。主要企業は不動産投資信託(REIT)として運営され、温度調節可能なユニットやソーラーパネルの活用で差別化を図っています。環境への配慮や効率的な運営が進む中、国際展開やフランチャイズによる成長も見られ、国内外の需要に応える体制が整っています。
今回は、アメリカの主要倉庫企業に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて12社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
読了時間の目安:5分
アメリカの倉庫企業8選〜ローカル企業編〜
Public Storage (パブリックストレージ)
1972年カリフォルニア州エルカホン市にて創業。基本構想は不動産開発業者がテキサス州への旅行中に目撃した、ダラスやヒューストンの郊外でミニ倉庫施設の建設がうまくいっていたことによる。それをカリフォルニア州に持ち帰り、広めたもの。
現在、アメリカ最大のセルフストレージサービスブランド。全米に2500を超す拠点を持ち、従業員は6000人を超す。収益は26億米ドル。アメリカ国内だけでなく、カナダやヨーロッパにも進出している。
初期段階では、アメリカの不動産有限責任組合(RELP)の投資家からの資金を使って運営。1995年に不動産投資信託(上場REIT)として再編成され、運営ている。
その後、買収や統合・スピンアウトを繰り返し成長。現在は公開会社としてニューヨーク証券取引所でも公開されている。2005年にはS&P500に追加されている。
出典:http://publicstorage.com/
Extra Space Storage (エクストラスペースストレージ)
倉庫業界で勢いがついている会社のひとつ。業界全米売り上げ2位。本社はユタ州ソルトレイクシティ市。1977年創業。事業形態はセルフストレージ施設に投資する不動産投資信託。
最も特筆できるのは、空調設備の整った倉庫・ドライアップユニットを持つ倉庫・ロッカー・ボートなどの小型船舶保管庫・キャンピングカーなどの保管庫・ビジネス書類などの保管庫などを運営。ブランド分けをして「Extra Space Storage」の他に「Life Storage」「Storage Expres」として差別化している。
全米43州とワシントンDCで3500を超える拠点を所有。収益は16億米ドル。従業員数は4000名を超す。レンタルスペースは訳2億7000まん平方フィートで業界1位。
2020年から3年連続で、NAREITのLeader in the Light Awardを受賞。同社は多くの施設でソーラーパネルを使用。SDGsへの取り組みは業界でも早かった。
出典:https://www.extraspace.com/
CubeSmart (キューブスマート)
2023年現在で、アメリカセルフストレージ業界第3位の企業。セルフストレージ施設の所有・運営・取得・開発に重点を置いた自主管理不動産会社。不動産投資信託(REIT)で運営されている。アメリカ国外への進出はしておらず、アメリカ国内にのみ1400を超える施設を持つ。
操業は、2004年にメリーランド州にてU-Store It Trustという社名で開始。2004年には新規株式公開を実施している。2008年に本社をペンシルバニア州ウェイン市に移転。2011年に現在の社名に変更をしている。さらに2013年、現在の本社があるペンシルバニア州マルバーン市に移転した。
収益は6億5000万米ドル。従業員は3000名を超す。一般的な貸し倉庫の他に、アメリカのセルフストレージサービスでは珍しい、極端な温度からの保護が必要なデリケートなアイテムを保管希望の顧客のために、温度調節可能な倉庫ユニットを提供している。
出典:https://www.cubesmart.com/
Life Storage (ライフストレージ)
起源は1982年に設立のファイナンシャルプランニング会社。1985年にフロリダ州にソブランセルフソトレージという社名で倉庫業界に参入。その後の3年間でアメリカ東海岸に約30か所の施設を作る勢いで成長。
その後も破竹の勢いで成長し、1995年には新規株式公開を実現している。また、ブランド名はすべて「Uncle Bob‘s Self Storage」に統一していた。2015年S&P400株価指数に追加登録。2016年のライフストレージLPを買収したことをきっかけに、ブランドを「Life Storage」に変更し、社名も同じものとした。
収益は5億7000万米ドルで全米倉庫業界第4位の企業。従業員は2300名を超す。2023年にパブリックストレージから買収案を提案されたが、結局、エクストラスペースストレージに127億米ドルで買収された。店舗数でいうと、この時点で親会社のエクストラスペースストレージは全米最大となった。
出典:https://www.lifestorage.com/
U-Haul (ユーホール)
引っ越し時期になると街中に走るレンタルトラックで有名な会社。本来はトラックなどの引っ越し用のrent-a-car会社ではあるが、多くのセンターでは梱包用品の販売などとともに、セルフストレージユニットのサービスも持っている。
起源は1945年、ワシントン州リッジフィールド市にショーエン夫妻がはじめたレンタルトレーラー会社。規模が大きくなり、のちに殺人事件までに発展する相続問題を抱えた。
セルフストレージは、週単位または月単位で提供。U-Boxと呼ばれている小さなポータブルストレージロッカーを、都市部を中心に月単位でレンタルしている。このU-Boxは、顧客の所有物を1つの場所で積み込んで、その後、別の場所に発送することも可能。
グループ全体の収益は45億米ドル以上。従業員は19500名を超す。
出典:https://www.uhaul.com/
National Storage Affiliates (ナショナルストレージアフィリエイツ)
セルフストレージ施設の所有・運営・取得に特化した、自己運営の不動産投資信託会社である。8つの参加地域事業社(PRO)からの寄付、第三者による買収・合弁事業パートナーシップを通じて、2023年現在、全米42州とプエルトリコに1119か所のセルフストレージ施設を所有・運営している。
賃貸可能面積は73000万平方フィート。収益は2.21億米ドルで全米倉庫業界第5位である。従業員数は1150名以上。創業は1973年にMoveItという引っ越し関連業務(トラックレンタル・倉庫レンタル)からスタート。1988年に、同業各社を買収・吸収合併させてSecurCare Self Storage という社名で共同設立。
PROブランドが8つ(ライトスペース・パーソナルミニスペース・サザンセルフストレージ・ガーディアン・ハイダウエイ・ムーブイン・ソトレージソリューション・ブルースカイ)、社内ブランドが4つ(iストレージ・ムーブイット・ノースウエスト・セキュアケア)ある。
出典:https://www.nationalstorageaffiliates.com/about-nsa
Storage Asset Management (ストレージアセットマネージメント)
ペンシルバニア州ヨーク市に本社を持つ、セルフストレージを専門とする不動産管理会社。創業は70年以上前とされている。
収益は3億米ドル。従業員数は900人弱。全米37州に211000個の倉庫ユニットを持つ。164の無人店舗・538か所のセルフストレージ施設を運営。ネットでのレビュー数は11914件あり、平均評価は5点満点中で4.7点と高い評価を得ている。
既存店の純営業利益は前年比15.8%増。同社管理の拠点のうち、101施設で優れた顧客サービスを継続的に提供し、顧客満足度の優れた基準を維持している企業を表彰するReputation の 800 Award を受賞。
前年度から無人施設が56%増加している。同社の「安定した経営」の判断基準は「3年間営業し続けていること」「80%の倉庫稼働率」の2つを維持することとしている。
出典:https://www.storageassetmanagement.com/about-sam/
StorageMart (ストレージマート)
創業者はゴードン・バーナム氏。1974年にはセルフストレージ業界で活躍してきた人物。ミズーリ州コロンビア市でストレージ会社 Storage Trust を設立。1994 年にティッカー SEA でニューヨーク証券取引所に上場。同社は、 1999 年にパブリック ストレージに 6 億ドルで買収された。この資金をもとに、1999年に同地にて創業。
同社の倉庫が他社と違うユニークな点は、施設を一般的な商業ビルの中層階などにした点である。フロリダ州マイアミ市にある施設は、10階建てのビルの中のフロアを使用している。このことは、施設利用者が簡単に施設にアクセスでき、治安の悪い人気のいない倉庫街に向かわなくて済むようにしている。
収益は2700万米ドル。従業員数は150人程度である。2007年にはカナダに進出。2012年までにはカナダで最大のセルフストレージ会社に成長している。2023年現在で、北米では300の施設を持つ。また、2016年にイギリスに進出している。
出典:http://www.storage-mart.com/
アメリカの主要倉庫企業3選〜日系企業編〜
Maruzen of America,Inc. (丸全昭和運輸株式会社アメリカ社)
アメリカ西海岸には日系の倉庫会社が100近くあるという。その中でも老舗の部類に入るのが同社。創業1974年。現在も本社はカリフォルニア州ロサンゼルス市に置く。
主に国際貨物の輸送と倉庫管理を行っている。管理された冷蔵保管化で農産物を取り扱うための150000平方フィートの倉庫と、一般商品の取り扱いとコンテナ貨物ステーション運営のための70000平方フィートの賃貸倉庫を持つ。
ロサンゼルス市の倉庫から、カナダのバンクーバー倉庫・シカゴ倉庫・ニューヨーク倉庫・テキサス倉庫・フロリダ倉庫・メキシコ倉庫への輸送ルートを持つ。
l親会社の丸善昭和運輸株式会社は1931年横浜で創業。現在は世界に150以上の営業所ネットワークを構築している。
出典:https://www.maruzenshowa.co.jp/base/americas/
SUMITOMO WAREHOUSE (U.S.A.), INC. (米国住友倉庫会社)
法人用の巨大倉庫を運営。1985年設立。1990年には160000平方フィートの面積を持つ自社倉庫を運営開始。自動車部品やペットフード、食料品から医療関連製品までの管理を取り扱っている。
倉庫内には工場並みの配電設備を持ち、加工・梱包機器を使った組み立て作業なども対応可能。アソートやキッティング、値札やバーコードの貼付なども可能。
提携先倉庫としての例として、イリノイ州の238000平方フィートの倉庫、ジョージア州の230000平方フィートの倉庫、サウスカロライナ州の732500平方フィートの倉庫、バージニア州の80000平方フィートの倉庫がある。
倉庫は24時間ビデオ監視システム・赤外線センサー監視システムなどが設置されている。常温倉庫の他、摂氏零下20度の冷凍倉庫や摂氏2度や10度の冷蔵倉庫も持つ。
出典:https://www.sumitomo-wh.com/jp/
NAKANO WAREHOUSE & TRANSPORTATION (米国中野倉庫運輸)
法人用の巨大倉庫を運営。カリフォルニア州ロサンゼルス市に235000平方フィートの倉庫とバージニア州チェサピーク市に78400平方フィートの倉庫を持つ。
アメリカ進出は、1971年に米国現地法人である「米国中野倉庫運輸株式会社」を設立している。
バージニア州の倉庫は2021年に出願されたバージニア州の外国法人であり、その開所式には州知事も参列してエイル。バージニア州における外国企業進出数は日系企業が133社。州内の外国企業の中では、日本企業が最も多いという。
倉庫は常温倉庫であるが、今後取り扱うものによって転換を考えるという。現在は主に雑貨や機械部品を取り扱っている。床面積の半分を他社に貸し出す計画もあるという。チェサピーク市は東海岸3位のコンテナ取扱量を誇るノーフォーク港にも近く、またシカゴ市とノーフォーク市を結ぶ貨物鉄道の拠点でもある。
出典:https://tonnex.com/
アメリカの主要倉庫企業2選〜外資系企業編〜
Seven Seas Worldwide (セブンシーズワールドワイド)
世界中に対応している引っ越し業者。1990年代にイギリスのケント郡の小さな町で、ジョン・ヘンダーソンとウィル・ヘンダーソンの兄弟が始めた引っ越し業者である。
アメリカ本社はサウスカロライナ州サンテ市にある。国際引っ越し業務のほか、国際手荷物配送や学生向けの引っ越しサービスなども手掛けている。同社のWEB広告には「有名なセルフストレージサービスやオレンジと黒のレンタルトラック会社を頼らないで」と比較広告をしている。
個人向けの倉庫はトレーラー内の小型輸送コンテナ式の「MoveCube」のブランドと、段ボールサイズの「StoreCube」の2つのブランドで展開中。特にStoreCubeは長期保管から短期保管までが可能であり、保管物を取集・保管・配送までが可能。
特にロサンゼルスとニューヨークには「デポ」と呼ばれるハブがあり、全米全土の拠点とネットワークが展開されている。
出典: https://www.sevenseasworldwide.com/en-us/
PODS (ポッズ)
家庭用のストレージビジネスに目を付けていたピーター・ウォーハースト氏によって、1998年に設立。引っ越しおよび保管会社である。現在はフロリダ州クリアウォーター市に本部を置いている。
2023年の収益は7億米ドル。従業員数は1300人を超す。油圧式の専用クレーン「PODZILLA」を使用して、トラックに積み込み輸送する。コンテナサイズは3つ。コンテナ自体の貸し出しは庭や駐車場に置いておくことも可能としている。
全米の州でフランチャイズされ成長していたが、2007年にバーレーンに本拠を置く投資会社Arcapitaに買収され外資系企業になった。さらに、2015年にはカナダのオンタリオ州教師年金制度に売却された。
現在、アメリカのほとんどの州にサービスを展開。オーストラリア、カナダ、イギリスにも進出している。また、2018年にはネバダ州に販売及びサービスセンターを開設している。
出典: https://pods.com
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。