アメリカの保育業界では、独自のカリキュラムや教育メソッドを持つ私立の保育施設が増加しています。多くの施設が2歳児から就学前までを対象とし、STEM教育、バイリンガル教育、社会情動的学習など、革新的なアプローチを取り入れています。また、国際的な教育方法の導入や、テクノロジーを活用した学習プログラムの開発も進んでいます。
今回は、アメリカの主要学校企業に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて13社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要保育企業8選〜ローカル企業編〜
Shir-Hasirim Montessori school (シル・ハシリム・モンテッソーリ・スクール)
1985年、カリフォルニア州ハリウッド市で開園。「シル・ハシリム」は聖書に出てくる言葉で、ヘブライ語で「創造の歌」に近い。教育システムは、マリア・モンテッソーリがアメリカで広めた「モンテッソーリ式教育法」をもとにしている。
対象は2歳児から6歳児。2023年版アメリカのトップ保育園に選出されている。様々な幼稚園・保育園評価サイトで高評価を得ている園である。校舎は現在ロサンゼルス市に「ベレンドキャンパス」「カールトンウェイキャンパス」の2か所。ベレンドキャンパスが本部として機能している。
モンテッソーリ式は年齢混成式が多く、その環境下で「原因と結果」を自然と身に着けるような教育システムになっている。「実践生活・感覚・言語・数学・化学・芸術・音楽」などを意識して作られている。当園でも、スペイン語や北京語などをオプションで学ぶ学習塾面も強化されている。ロサンゼルスの激しい私立小学校受験競争で、当園の卒業生は、優秀な進学実績を残している。
出典:https://www.montessorihollywood.org/
Westside Neighborhood School (ウエストサイド・ニーバーフッド・スクール)
保育園から8年生までを対象とした男女共学の私立校。カリフォルニア州ロサンゼルス市に1980年設立。ロサンゼルス国際空港の北部に位置する。、カリフォルニア州ハリウッド市で設立。開校当時は防音施設もままならなかったため、離着陸音がうるさかったという。当時の運動部のクラブ名を「ジェッツ」としていた。
現在の生徒数は合計500名を超す。保育園(デイケア)での生徒:保育士の割合は7:1。幼稚園で9:1である。同校の有名プログラムのひとつに「ファミリー・グループ」がある。全学年の生徒が学年・年齢の垣根を取ってグループ分けされ、行事や社会奉仕プロジェクトに参加する。
現在の施設は2005年に大幅改装された校舎に、さらに2010年に舞台芸術やスペイン語・合唱音楽用のスペースを確保するために増築された。幼稚園・フルサイズの体育館・中学校のSTEMクラスのためのスペースも確保された。
保育(プレスクール)と発達幼稚園(DK)は2歳半から。
出典:https://wns-la.org/
Lowell School (ローウェルスクール)
1965年創立。保育園から8年生までを対象とした私立進学校。プログレッシブと言われる、先取重視の独自カリキュラムを実施。共学校である。保育園から8年生までを対象とした男女共学の私立校。創業時は教会の地下室で保育園から始まっている。当時の年間保育料は325ドルであったという。
1975年には幼稚園を追加。83年に1年生、翌年には2年生を加えて規模を徐々に拡大していった。90年代にはメリーランド州私立学校協会の認定を受け、現在の校舎に移転。2012年には現在のスタイルである8年生までを対象とした学校になった。
学校全体のテーマとして「コミュニティ・多様性・アイデンティティ」を掲げている。創設者のジュディス・グラントとスーザン・センブルは、ジノットやピアジェ、モンテッソーリ、デューイ、フレーベルなどの教育法をアレンジし、独自のメソッドを作っていった。また、キャンパスは2014年に国家歴史登録財に認定されている。
出典:https://www.lowellschool.org/
East Linn Christian Academy (イーストリンクリスチャンアカデミー)
オレゴン州レベノン市に1982年に創立。グローブ夫妻が二人とも教育分野でのキャリアを積んでいたが、聖書の世界観を大切にする環境での教育を実現したいと思い、聖約キリスト教学校として設立された。
就学前早期教育プログラムは、3歳児(2年保育)と4歳児(1年保育)に提供されている。キリスト教教育推進センターによるTeaching for Transformationプログラムを採用している。また、幼稚園から第二外国語としてスペイン語の教育を取り入れている。小学校では体育の時間にスペイン語によるイマージョンを取り入れている点がユニーク。
2008年から留学生の受け入れを開始。フィリピン・中国・韓国・ドイツ・香港・日本からの留学生を受け入れた経験がある。留学生は資格を持ったホストファミリーの家でホームステイ制度で生活する。
3歳児保育から高校最終学年の12年生までを対象とする、男女共学の大きな学校。保育園から小学校などへはエスカレーター式。
出典:https://eastlinnchristian.org/
Villa Duchesne (ヴィラ デュシェーヌ)
ミズーリ州フロンテナック市にあるローマンカトリックの私立校。聖心国際ネットワークに所属している。創立は1929年。2023年の生徒数は471人。小学校までは共学。7年生から12年生までは女子校である。
小学校までの部門は、かつてはオークヒルスクールという、別名称を使用していたが現在はヴィラデュシェーヌで統一している。これは7年生から女子校になるので、混乱を避けるためだったといわれている。
運動部の活躍がみられる学校であり、特にゴルフ・バレーボール・ホッケーなどが強い。卒業生の中にはプロ選手も輩出している。学校名はアメリカに移住したフランス出身のシスターの名前にちなんでいる。このため、教育の随所にフランスの伝統が垣間見られる。
保育は3歳児から。校舎は60エーカーの森林の中にある自然豊かな環境。築100年もの丸太小屋は創立当初の幼稚園クラスだったもの。キャンパスの自然遊歩道は全米野生生物連盟による認定野生生物生息地に指定され、保護されている。
出典:https://www.villa1929.org/
Cambridge-Ellis School(ケンブリッジ-エリス スクール)
マサチューセッツ州ケンブリッジ市に1981年創業。ダウンタウンの便利な位置にあるセントジェームス聖公会教会の建物の一部を借りて、開校。現在は2歳児から5歳児までを、家庭のニーズや子供の性格などに合わせて様々なクラスに編成している。
1996年にはMIT外国語言語学科の協力を得て、午後から中国語(北京語)イマージョンプログラムを開始。翌年にはスペイン語とフランス語の教室も開始。2007年には台湾にあるセントジェームス幼稚園と姉妹校提携および文化教師交換プログラムを締結。毎年夏に2人の保育士を、通年で一人の保育士を、セントジェームス幼稚園との間で交換派遣している。
半日保育も選択可能。全日保育では年齢や発達度、家庭の希望に合わせて7つのクラスに編成。イタリアで開発されたレッジョ・エミリア教育法に基づく指導を実施。「社会性」「時間に縛られない」「子供の権利を守る」の3つを大切にしている。
出典:https://cambridge-ellis.org/
GEMS World Academy Chicago (GEMSワールドアカデミー・シカゴ)
GEMSはGlobal Education Management Systemsの頭文字を取ったもの。インド出身のバーキー夫妻が1959年にドバイで始めた家庭教師事業が起源。様々な国の私立学校を買収し拡大。世界最大の私立学校経営社といわれている。アメリカには2012年上陸。イリノイ州シカゴ市のダウンタウンに校舎を構える。
開校時は生後6週間から5歳児までを対象とした保育園とした。開校当時の園名はリトルGEMSインターナショナル・シカゴだった。その後、2014年に国際バカロレア学校として同校が設立。2歳児の保育園から8年生までを対象とした。
3歳児対象のプレスクールから。幼児保育から国際性を意識したカリキュラムを導入。さらにシカゴ教育委員会から 指定されている、イリノイ州学校指導要綱にも基づいている。
ニューヨークなど、他地域にも進出しようとしたが、規制などの問題で失敗している。アメリカでの校舎はシカゴ校 のみ。
出典:https://www.gemschicago.org/en
アメリカの主要保育企業3選〜日系企業編〜
Kingsley Montessori School (キングスリー モンテッソーリ スクール)
マサチューセッツ州ボストン市の学生街でもあるバックベイ地区にある私立デイケアセンター。対象は2歳児から12歳児まで。学校名にあるとおり、モンテッソーリ式教育をもとにした指導をしている。
1938年、キングズレー氏によって開設。園児は6人だったという。校舎はその当時から使い続けている歴史的建造物である。1986年開校の6歳から12歳までを対象としたバックベイモンテッソーリ校と、1991年に合併した。このことで2歳児から12歳児までをエスカレーター式に指導する学校が誕生した。
生徒数は300人以上。6年生(12歳児)の生徒:教師の全国平均は17:1だが、同校では4:1で、同校の2歳児クラスでは7:1である。専任教師・非常勤講師を含めて80人。白人の子供が57.3%。一般的な全日保育コースの学費は年額で30000米ドル以上となる。
様々な保育園検索サイトなどで、高評価を得ている。
出典:https://www.kingsley.org/
Enso Daycare (円相デイケア)
ニューヨーク州ブルックリン市にある個人経営の保育所。生後2週間の乳児から10歳児までを対象としている。「円相」は、禅における書道画のひとつで、丸を一筆で描いたものを指す。
責任者のアンナは、ヨガのインストラクターでもある。5年間の保育経験と日本の教育学からの影響を受けて、デイケアのなかに日本文化を織り交ぜ、ヨガを体操として取り入れている。基本教育法は日本式保育とモンテッソーリ式との混合メソッド。
半日保育可。週に3日だけの保育から週に5日の保育まで選択ができる。基本開園時間は午前9時から午後5時まで。延長保育は午前7時半からと午後6時まで。クラス定員は12名。保育士1人に子どもは4から6人。
希望者には朝食・昼食・おやつの用意もする。朝食にはふわふわのホットケーキやお昼にはお弁当など、食事にも日本式を多く取り入れている。
場所柄、若い夫婦が利用している。
出典:https://www.ensodaycare.com/
Yoko‘s Day Care (ヨーコのデイケア)
ニューヨーク州ブルックリン市にある個人経営の保育所。4人の日本人女性職員と、月曜日の音楽教室担当の女性職員とで運営している。生後6週間の乳児から就学前5歳児までを対象としている。
週1日保育から週5日の保育まで対応。例えば週5日で朝8時から夕方6時までの全日保育の場合、月額2800米ドルの園料がかかる。同園は個人経営ではあるが、州保険局デイケア局から認可を受けている。また園児に対しての保険や保育士たちのCPR認定なども基準値を満たしている。
日本文化の指導を多く取り入れている。英語と日本語の両言語を使って、日本の伝統的な物語を読む・日本の歌を歌う・季節の行事・折り紙・箸の使い方などを学んだりしている。
ヨガ・手話なども指導に取り入れている。3歳児以上には武道も取り入れている。
出典:https://www.yokosdaycare.com/
Japanese Children‘s Society (ニューヨーク育英学園)
1979年、ニューヨーク州マンハッタン区に開設した「日本語によるプレイグループ」が起源。1980年に非営利団体Japanese Children’s Society, Inc.を設立し、日本語名称を「よい子の学園」とした。1989年にニュージャージー州イングルウッドクリフスの現校舎に移転した時に現在の名称になった。全日制幼少一貫教育機関(三歳児から6年生)としては、東海岸で唯一。
ニュージャージー州フォートリー市の教室では、1歳児からの保育を開講。マンハッタン校舎では幼稚園や親子教室も開講。ポートワシントン市の校舎でもアフタースクールや土曜スクールなどで幼稚部を開講している。なかでもニュージャージー州の「きりんのへやこども園」は州の認可を得ている長時間日本語保育。早朝保育は7時30分から。夕方は 6時まで対応可能。スクールバスや給食も対応可能。
私立日本人学校としては歴史のある学校。新しく赴任する家庭の中には、これらの学校施設の近隣に住居を構えるケースがままみられる。
出典:https://japaneseschool.org/
アメリカの主要保育企業3選〜外資系企業編〜
The British International School of Chicago (BISC-SL)
ブリティッシュインターナショナル スクール オブ シカゴ サウス ループ校舎。母体となるNord Anglia Education社は、1972年イギリスのロンドン市にて英語学校として設立。のちにインターナショナルスクールプロバイダーとして成長。1990年から2000年代前半に学習サービス部門に加えて、デイケア及び保育所の事業も立ち上げた。様々な学校を買収しグループを拡大。現在は30か国以上に80校以上の私立全日制及び寄宿学校がある。
北米には11校舎。そのうちのシカゴ校サウスループ校舎は2001年開校。はじめは4人の生徒と2つの教室であったという。2015年に現在の校舎に移転し、対象は3歳児から18歳まで。
保育は国際初等カリキュラム(IPC)に基づいて指導される。またイギリス式の英語ナショナルカリキュラムを組み合わせて、6年生以降につなげていく。高校では国際バカロレア式。総生徒数は300人を超す。
出典:https://www.nordangliaeducation.com/bisc-south-loop
Wu Yee Centers (ウー・イー・センター)
カリフォルニア州サンフランシスコ市を中心にした、中国系の保育所。1976年に児童権利奉仕協会を設立。広東語で「子供の保護者」を意味する「ウー・イー・児童奉仕協会」と社名変更。
1990年代には幼児保育の公的支援を増やすために、サンフランシスコ保育提供者教会を創設。早期ヘッドスタート補助金を獲得。ヘッドスタートプログラムは、低所得家庭の子供を支援するアメリカ政府のプログラムである。
生後3か月から5歳児までを対象。保育士はカリフォルニア州教師資格認定委員会の要件を満たしている。州の保育に関する様々な規定をすべてクリアしている。
センターはサンフランシスコ市内に3か所。その他、一般家庭でも保育が可能となるような親向けの資格取得コースなども用意。
出典:https://wuyee.org/
AGBU Manoogian-Demirdjian School (AGBU マヌージャン デミルジャン スクール)
カリフォルニア州ロサンゼルス市にあるアルメニア一般慈善連合が運営するアルメニア系アメリカ人の私立学校。授業はアルメニア語とイギリス英語で行われる。
1976年に開校。1980年までに生徒数は129人、幼稚園から6年生までの学校に成長していた。現在の同校での保育は2歳児から。STEM教育も幼児から始めており、数学・科学・芸術・創造性などに対しての教育は高く評価されている。
ロサンゼルス都市圏では2番目に小さいアルメニア系私立学校ではあるが、成績優秀者を多く輩出している。アメリカの統一試験であるSATのスコアが満点だった生徒が何人もいるという。早期幼児教育を受けた子供が同校高等部に進学し、ハーバード大学・ブラウン大学・コーネル大学などの、いわゆるアイビーリーグに進学しているという。このため、ロサンゼルス都市圏では人気の保育所になっている。
出典:https://agbumds.org/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。