アメリカの幼児教育・学習塾業界では、独自のカリキュラムを持つフランチャイズチェーンが急成長しています。多くの企業が生後6週間から12歳までを対象とし、STEM教育、バイリンガル教育、社会情動的学習など革新的なアプローチを導入しています。また、国際的な教育方法やテクノロジーを活用した学習プログラムの開発も進んでいます。
今回は、アメリカの主要幼児教育・学習塾企業に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて13社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要幼児教育・学習塾企業8選〜ローカル企業編〜
The Goddard School (ゴッダードスクール)
1986年、ペンシルバニア州マルバーン市で設立。創立者のロイス・ゴダード・ヘインズ女史が、保育を必要とする子供たちと、その家族の生活をよりよくするためのメソッドを考案。周辺地域の家庭に評判の幼児教育園・学習塾になった
1988年、同園に将来性を感じた、全米で車のトランスミッション修理専門工場チェーンを展開してたアンソニー・A・マルティーノが同園を買収。ゴダードスクール幼児教育フランチャイズとして設立した。当時の会社名はカルーセル・システムズであった。
2002年に会社名をゴッダーズ・システムズに変更。2022年に投資会社のシカモア・パートナーズに買収され、完全子会社となった。現在全米に633店舗のフランチャイズ店を展開している。
対象は生後6週間の乳児から6歳児まで。独自の「遊びベース」のFLEX学習プログラムを提供している。
出典:https://www.goddardschool.com/
Primrose Schools (プリムローズ)
1982年ジョージア州マリエッタ市にて、アーウィン夫妻により操業。設立当初はプリムローズ・カントリー・デイスクールという社名であった。創業から4年後、ある程度安定していた幼稚園経営をさらに安定させるために、それまでの半日保育だったカリキュラムを全日制幼稚園に移行。さらにフランチャイズ方式も採用した。
同園のビジネス化の立役者は、現在のCEOであるジョー・キルチナーである。同氏が経営コンサルタントとして入社してのち、同園は躍進していくこととなる。のち、創立者のアーウィン夫妻は、1999年にコネチカット州グリニッジ市に本部があるセキュリティ・キャピタル・コーポレーションに園を売却。同園はさらに2001年から独自の「バランス学習カリキュラム」を研究・開始した。
その後も買収などを経て成長。カリキュラムも専用研究所を設立して、その純度を高めた。2012年には全米の小中学校を認定する非営利組織であるCogniaにもプリムローズメソッドが採用された。
出典:http://www.primroseschools.com/
The Learning Experience (ラーニング・エクスペリエンス)
生後6週間程度の乳児から5歳児までを対象とした、早期英才教育幼稚園。1987年、その当時25州とアメリカ以外の4か国に教室をもっていた、北米で2番目に大きな営利保育プロバイダーのラーニング・ケアグループから、「チューター・タイム」のブランドを買収したことが同社歴の始まりという。この買収には、ワイズマン家が軸となって動いた。
ワイズマン夫妻が2002年、「チューター・タイム」のノウハウをさらにブラッシュアップさせて保育業界に再参入した。この時の新たなブランド名が現在の社名である。
同園のカリキュラムはSTEMベースの学習であったり、追加料金なしにすべてのカリキュラムが提供される。自主性を重んじる教育方法は、これまでも実践されてきたが、現代の子供たちに合わせて日々改善されていく新しいシステムとなっている。
本部はゴールデンゲートキャピタルの子会社。同園の本部はフロリダ州ディアフィールドビーチ市。
出典:https://thelearningexperience.com/
Kiddie Academy (キディアカデミー)
1981年、メリーランド州アビンドン市にて、ミラー夫妻により設立。生後6週間程度の乳児から12歳児までを対象とした、早期英才教育幼稚園である。1993年には同社で初めてのフランチャイズ契約が成立。以降、州外にも拡大していき、2022年現在で、33州とワシントンDC内に300以上のフランチャイズ店が展開している。
このフランチャイズ店のなかのいくつかでは、全米幼児教育協会によって認定されている。また、同園で開発されたプログラム・カリキュラムは、400以上の関連認定基準をクリアしており、さらに10以上の全米幼児教育協会プログラム基準に照らしあわせて作られている。
2019年のフォーブス誌には、「購入するのに最適なフランチャイズ店」のひとつに選出されるなど、いくつかの経済紙に優良フランチャイズ店として高い評価を得ている。
日本の学習塾のような、放課後の学習プログラムは12歳までのコースが用意されている。また、夏期講習(サマーキャンプ)も5歳児から12歳児までのコースが用意されている。
出典:http://kiddieacademy.com/
Kids ‘R’ Kids Learning Academies(キッズRキッズ)
起源は1961年、ジェン・ビンソン夫人が、息子のパットと自宅で保育園を始めたことから。ジョージア州ディケーター市にて創業。園名をキディ・シティとしていた。当時はまだ幼稚園や保育園というスタイルがアメリカでは認識されておらず、グループケアという考え方も普及していなかった。
後のパット夫人となる、ジャニスが高校生のころ、運営を手伝いはじめた。二人は幼稚園経営を成功させ、自分たちの息子二人が通うことになった私立幼稚園の設立まで成し遂げた。24年間の幼稚園経営の後、1985年、都市部にキッズRキッズを設立。
3店舗まで展開したところで、自分たちだけで運営していくことに限界を感じた二人は、Kids ‘R’ Kids International, Incorporated を設立。1988年にフランチャイズ方式で契約を開始した。現在は北米に170店舗、中国にも進出する大手に成長している。
カリキュラムはピアジェ、ヴィゴツキー、スミランスキーの主要な教育理論によってサポートされている。
出典:https://kidsrkids.com/
Children’s Lighthouse (チルドレンズライトハウス)
生後6週間から12歳児までを対象とした幼児教室・学習塾。1997年にブラウン兄弟が自分たちの子供たちにと、開校した幼稚園が起源。早期幼児教育の基礎として、人格と価値観の促進に重点を置いた最初の早期英才教育幼稚園として設立。
教育訓練ディレクターのクリスティ・スミス博士が中心となって開発された独自のLighthouse Pathways学習アプローチは、科目の根底となる教材を目指した。生後6週間から2歳児までに使われるLighthouse BRIGHT、就学前までの児童に適したライトハウスCARES、STEM教育に対応すべく、12歳児までのxSTREAM Quest、そしてサマーキャンププログラムの4つで構成されている。
創業地のテキサス州には本部を含めて4つの拠点があり、その他に8つの州で9つの拠点を持つ。さらに幼児教育用の 現場は20の施設を持つ。スタッフ用の教育施設やカリキュラム研究施設などを含めると、40か所以上の施設があるという。
経済紙でも優良フランチャイズと高評価されている。
出典:https://childrenslighthouse.com/
Lightbridge Academy (ライトブリッジ・アカデミー)
ニュージャージー州アイセリン市に1997年創業。生後6週間の乳児から幼稚園までの子供たちを対象とした早期教育と、10歳児までの特別プログラムを提供している。また、コロナ禍を経て、遠隔学習プログラムも開発されている。
2011年、独自のコンセプトを中部アメリカや大西洋地区に拡大するためにフランチャイズ化。同社のシステムは、急速に発展・成長している早期教育フランチャイズのひとつに数えられている。創業はファルザラノ夫妻により、「子供を 中心に、その家族、その担当教師・施設の所有者・施設のある地域社会」の5つの要素が重要と考えるメソッドが作られた。
質の高い幼児教育プログラムを望む家庭に向けたサービスを提供していると自負している。現在フランチャイズが展開しているのはニューヨーク州などを含め、全米に14州。施設は140を超しているという。
突発的な保育が必要な場合に備え、バックアップシステムといわれる飛び込み保育を用意。高く評価されている。
出典:https://lightbridgeacademy.com/
Discovery Point (ディスカバリーポイント)
1988年にジョージア州ダルース市にて、クラーク夫妻によって設立された。自己発見・問題解決・創造的思考の促進など、幼児教育の一般的モットーを掲げて成長。対象は生後6週間の乳児から6歳児まで。
創立から早くも二年目には2店目が設立。1990年からフランチャイズ方式で同社の保育理念を拡大させてきた。現在 ジョージア州・フロリダ州・テネシー州・ノースカロライナ州にチャイルドケアセンターを開設。幼児教育カリキュラム制作会社のTeaching Strategies社とのコラボレーションにより、独自のカリキュラムを開発している。
海外進出はしておらず、すべて北米のみ。2012年には56店舗のフランチャイズがあったが、2019年には47店舗に、徐々にではあるが減少している。様々なうわさがあるが、好調な幼児教育フランチャイズ業界にあって、フランチャイズ料が高いのではないかとうわさされている。また、創立者のダイアン・クラーク女史が2012年に他界したことで、 経営者の求心力が落ちたことも理由ではないかといわれることもある。
出典:https://www.discoverypoint.com/
アメリカの主要幼児教育・学習塾企業3選〜日系企業編〜
Kumon Institute Education(公文教育研究会)
アメリカで最も成功したといわれる日本式の学習方法。日系フランチャイズ幼児教室・学習塾としては全米規模。アメリカ初上陸は1983年。ニューヨークとロサンゼルスに日本人用にサービス開始。ところがすぐに全米の話題となり、特に教材が高く評価された。現在でも大きな書店の学習コーナーでは、公文式ドリルが販売されていることも多い。 そして1989年、アラバマ州スミトン市の小学校で公文式ドリルを授業に導入。以降、全米に影響を与えた。スミトン市は2001年まで公文ドリルを使用、以降は学んだ経験を生かした独自のプリントに切り替えた。
2001年から2歳児から5歳児を対象とした「ジュニア公文」プログラムをスタート。それまでは放課後の学習プログラムであった公文式が、基本的な算数スキルとリーディングスキルを育成するプログラムにまで発展した。6歳児以上の公文式は日本の公文式と、ほぼコンセプトは同じ。北米には、2018年現在で2200のフランチャイズ店、410000人の子供が利用しているという。
2023年から、デジタルプログラムを開始。週5日間は毎日30分のドリルをこなし、残りの2日は近くのセンターに通うか、バーチャルクラスに参加するシステム。
出典:https://www.kumon.org/
Nishiyamato Academy of California (西大和学園カリフォルニア校)
日本人が多く在住するカリフォルニア州トーランス市の南にあるロミータ市にある、日本人学校の幼稚部。小学校は1992年に設立されたが、当時から幼稚園の開園希望が多数聞かれ、満を持して2004年に年長コースを設立。その後、2009年には年少クラスを、2010年には年中クラスやプレ年少クラスを開設している。2012年にはサンノゼに幼稚園を開校している。
本校舎であるロミータ校舎での全日クラスでは、年少から年長を募集中。同校では、制服を指定している。入園児には試験があり、簡単な筆記試験と面接がある。土曜日のみの補習校では、すべてのクラスを募集しているわけではないので注意。
日本の文科省幼稚園教育要領のもとに運営。日本語による保育・教育によって、日本人としての心を育てることをうたっている。
未就園児童に対しても、週1回の英語クラスを用意。オンライン教育・体育指導がある。教育を目的とした非営利団体。
出典:https://www.kumon.org/
Lyceum Kennedy International School (リセケネディ日本人学校部門)
元東京銀行総務課勤務だった園田耕二氏が、1986年にリセケネディフレンチアカデミー学校経営権の一部を買収。当時はニューヨーク州マンハッタンの59丁目の高層ビル11階に統括オフィスを構えていた他、日本人が多く住むウエストチェスター郡にもオフィスがあった。1987年にはウエストチェスター郡アーズレー市の閉校した現地校の一部を借り、全日制日本人小学校・幼稚園を運営していた。さらに、土曜日のみの補習校を幼稚園をマンハッタン校にて1997年に 開始。
日本人が激減する中、アーズレー市の全日制小学校・幼稚園は2004年に閉校。現在はマンハッタン43丁目にあるリセケネディ本校で全日制幼稚園を運営している。3歳児から5歳児が対象。土曜補習校は学習塾的な扱われ方がされており、幼稚園から高校生までが対象。
週5日間日本語環境で過ごす日本語プログラムと、週の半分を英語環境で過ごす日英バイリンガルプログラムが選択できる。放課後の1時間、アクティビティプログラムあり。延長保育6時まで可。
出典:https://jp.lyceumkennedy.org/academics
アメリカの主要幼児教育・学習塾企業2選〜外資系企業編〜
Chinese American International School (中国系アメリカ人インターナショナルスクール)
頭文字を取ってCAISとされることが多い。1981年創立の私立幼稚園。現在は8年生までの男女共学の、中国語と英語のイマージョンカリキュラムを持つ私立校となっている。この学校は、アメリカで初の中国語教育を実現した学校として、以降の中国系学校のモデルとされている。
創設者のキャロル・ルース・シルバー女史が台湾人の養子の幼稚園を探したが、北京語を話す保育士がいる幼稚園は皆無で、自分自身で幼稚園を始めた。発足当時は4人の幼稚園児から。サンフランシスコ州立大学中国語学部の教員であったシャーリー・リーが教師兼校長として2000年に退職するまで務めた。当時はカリフォルニア大学増築棟地下室が 幼稚園の教室であった。
プリスクールは3歳児と4歳児の混合グループが18人、それが4クラスで構成されている。キンダーは4クラス。平均14名ずつの園児がいる。要望に応えて、プレキンダーが2歳児のために3クラス開講された。
サマーキャンプはプレスクールとキンダーで開催する。
出典:https://www.cais.org/
Maple Bear international schools (メープル ベア インターナショナル スクール)
インターナショナルとせず、カナディアンとすることやマルチリンガルとすることもある。カナダ式の教育方法を、 それぞれ自国の教育方法と合わせて実践していく、フランチャイズ教育サービスである。アメリカでは幼稚園・学習塾がメイン。他の国では小学校から高等学校までフランチャイズしている場合がある。
2023年現在、世界40か国以上に500校を超すフランチャイズ校がある。在籍生徒数は合計すると5万人ともいわれている。カナダの教育システムは、OECDが実施しているPISAで英語圏1位と評価されている。2004年、ブリティッシュコロンビア州ノースバンクーバー市に設立。現在はオンタリオ州トロント市に本社を置く。
アメリカではアリゾナ州・テキサス州・フロリダ州に開講。それぞれ6週間の乳児から6歳までが対象。フロリダ州の園では乳児専用カリキュラムのベアケアも導入している。
幼児向けバイリンガル教室として、注目されている。
出典:https://www.maplebearusa.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。