アメリカの病院業界は、大規模病院の統合と中小病院の経営難が進む中、研究開発と最新技術導入に注力しています。専門分野での評価が重視され、テレヘルスや患者中心のサービス提供が今後の課題です。また、外国人患者への対応や地域密着型サービスの重要性も高まっています。
今回は、アメリカの主要病院企業に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて12社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要病院企業8選〜ローカル企業編〜
Barnes-Jewish Hospital(バーンズ ユダヤ人病院)
ミズーリー州セントルイス市にあるワシントン大学医学部の成人教育病院である。当院やセントルイス小児科などが加盟しているミズーリー州セントルイス市に本部を置くBJC HealthCareグループの会員。
1892年に亡くなった食品卸売業者及び銀行家のロバート・バーンズ氏の遺言によってバーンズ病院が設立。1902年に信条や国籍を問わない病院経営を掲げてユダヤ病院が開業。 この2つの病院が1996年に統合されて現在の形になった。
全米タブロイド紙の主催によるUS News & World Reportで、2012年ごろから総合評価において上位ランキングされている。2022年度版においても、総合トップの評価を得ている。心臓外科や腫瘍学に対しての評価が高い。緊急対応にも優れ、ヘリポートも稼働している。
病床数は1266。病院スタッフは主治医1723人を含む12125人。全米レベルでは雇用が厳しい地域であるために、セントルイス都市圏最大の民間雇用主となっている。
出典:http://www.barnesjewish.org/
Brigham and Women’s Hospital(ブリガム アンド ウィメンズ病院)
マサチューセッツ州ボストン市にあるハーバード大学にはいくつかの附属病院がある。最大なのはマサチューセッツ総合病院。次点なのが当院である。ボストン市内のロングウッド医療地域では最大の病院。
年間6億米ドルを超す研究予算が与えられている。この予算額は世界で2番目である。(1番はマサチューセッツ総合病院)病院ベースの研究プログラムの業績では、世界初の心臓弁手術や世界初の固形臓器移植などがある。
1913年設立のピーター・ベント・ブリガム病院と1914年設立のロバート・ブレック・ブリガム病院と1832年設立のボストン女性病院が、1980年に合併して現在の形になった。研究病院であるがために、世界初の手術などが頻繁に行われている。
病床数は793。年間225万人の外来患者を抱えているという。研究医や医学研究社、教員を含めると5000人の医者が在籍している。従業員はのべ20000人を超すという。
出典:http://brighamandwomens.org/
Cedars-Sinai Medical Center(シダーズ サイナイ メディカル センター)
カリフォルニア州ロサンゼルス市にあるUCLAデビットゲフィン医学部の教育病院関連施設である。いわゆる三次病院であり、主治医や家庭医の紹介状がないと利用できない。
国立衛生研究所(NIH)から研究資金を提供される主要機関のひとつ。毎年1億米ドルの提供がある。主に生物医学研究に主軸を置いており、幹細胞生物学や免疫学の研究が有名で、その他にも医療における人工知能研究などが有名である。900以上の研究が常に行われている。
ヘリポートも備えるレベル1外傷センターとして、緊急対応も可能。2023年の、US News & World Report は当院を西部で最も業績のある病院と高評価している。
病床数915。2000人を超える医師と10000人の従業員。2000人以上のボランティアが働く。1902年、ユダヤ人実業家のカスパレ・コーンしにより設立。現在は非営利病院。
出典:https://cedars-sinai.org/
Cleveland Clinic (クリーブランドクリニック)
オハイオ州クリーブランド市に拠点を置く非営利学術医療センターである。オハイオ州非営利法人であるクリーブランドクリニック財団が所有及び運営。州内に11の関連病院、20のファミリーヘルスセンターを持つ。また、フロリダ州とネバダ州にも施設を持ち、海外にもアラブ首長国連邦に1施設、カナダのトロントに2施設、イギリスにも施設を持っている。US News & World Report では、常に上位に評価されている。
1921年設立。ケース・ウエスタン・リザーブ大学医学部と提携しており、また、オハイオ大学ヘリテージ整骨医科大学とケント州立医科大学の教育大学でもある。2000人近くの研修医とフェローを抱え、大学院医学教育認定評議会に承認された100を超える研修プログラムを実施している。
緊急対応はレベル2外傷センター。ヘリポート有。メインキャンパスは1400だが、グループ全体を合わせると6000を超す。従業員は7万人近く。20000人の認定看護師、4000人以上の医師を含む。
出典:http://clevelandclinic.org/
Hospital of the University of Pennsylvania (ペンシルバニア大学病院)
ペンシルバニア州フィラデルフィア市に位置するペンシルバニア大学の旗艦病院。常にアメリカのトップ病院として評価されている。1874年に設立。国内最古の大学附属病院とされる。1756年に建てられたペンシルバニア病院は当院の所属するペンシルバニア大学保険システムグループ内の病院であり、アメリカ国内初の医学図書館であり、国定歴史建造物にも指定されている。
ベッド数は988。非営利病院。2019 年のUS News & World Report では、総合評価において全米トップ病院にランクされた。2023年版でも上位にランクされている。
2020年にはコロナ禍による患者収容能力を高めるために、15億米ドルをかけて新施設建設計画を加速させている。近くにある別の病院で近隣からは通称「プレスビー」と呼ばれているペン プレスビテリアン メディカル センターや「ペンシー」と呼ばれるペンシルバニア病院もグループ内の医療施設。「ペンシー」は1751年設立のアメリカ初の病院ともいわている。
出典: http://pennmedicine.org/hup
Houston Methodist Hospital(ヒューストン メソジスト病院)
当院はヒューストンメソジスト学術医療センターグループに所属する医療機関のひとつであり、テキサス州ヒューストン市のテキサスメディカルセンター内にある。
1919年、メソジスト聖公会の奉仕活動として設立。現在、医療グループであるヒューストン・メソジストには8つの病院・学術機関・プライマリケアなどからなる、300以上の施設から構成されている。
当院は、US News & World Reportによる病院ランキングにおいて、常に総合評価上位ランキングされている。特に心臓血管外科・癌・てんかん治療・臓器移植において世界的に有名である。
ベッド数2500。緊急対応はレベル3外傷センター。非営利病院であり、コーネル大学ワイルコーネル医科大学とは共同で研究所を持っている。当院だけで提携医師は2000人を超し、従業員は8000人を超える。
1968年に世界初の多臓器移植に成功。
出典: https://www.houstonmethodist.org/
Johns Hopkins Hospital(ジョンズ・ホプキンス病院)
メリーランド州ボルチモア市にある当院は、毎年US News & World Reportによって高評価を得ている。元はボルチモア市出身の商人および銀行家のジョンズ・ホプキンズ氏の、現在の価値で2億米ドル近くの遺産により、大学と病院を設立したことによる。当時は、アメリカ史上最大の遺贈であったという。現在は半官半民の経営。
当院は現代アメリカ医学の創設機関であり、アメリカ医療伝統の発祥の地であるといわれる。3.2ヘクタールの敷地内に当時のアメリカ医学会最高医としてしられる4人の医師を召喚し開業。また大学は1893年に女性の入学を許可した最初の医学部となった。初代医学部長は、研修医を発案した人と言われている。回診という言葉も、当院の病棟が円形であったことから発生した言葉ではないかといわれている。
ベッド数は1000を超す。1700人を超す医師が在籍し、総従業員は30000人を超している。毎週の外来者数は80000人を超すという。
当院はアメリカ初の大学医学部と提携した小児クリニックを持つ。
出典: https://www.hopkinsmedicine.org/
Massachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院)
マサチューセッツ州ボストン市にある、ハーバード大学医学部付属病院である。当院には世界最大の病院ベースの研究プログラム「マス総合研究所」がある。この研究所の年間研究予算は12億米ドルといわれる。また、当院の創立は1811年で、アメリカで3番目に古い総合病院である。(最古は1751年創立のペンシルバニア病院、次点は1771年創立のニューヨーク病院)ノーベル賞受賞者は13人。
運営はマス・ジェネラル・ブリガム・グループ。このグループ全体の年間収益は180億米ドルだった。当院のベッド数は約1000。非営利病であり、緊急対応はレベル1外傷センターおよびレベル1小児外傷センターである。ヘリポートもある。
年間約150万人の外来患者を処理している。25000人以上の従業員を抱える。外科スタッフは年間34000件以上の手術を行っている。産科では、毎年3800軒以上の出産を扱っている。
2030年完成予定の新病棟には500のベッドが加わる予定。
出典: http://www.massgeneral.org/
アメリカの主要病院企業3選〜日系企業編〜
Mount Sinai Doctors-Japanese Medical Practice (東京海上記念診療所)
1990年、東京海上火災保険株式会社(現在の社名は東京海上日動火災保険株式会社に変更されている)の寄付を受けて設立。ニューヨーク最大の医療機関グループである「マウントサイナイ・ヘルスシステム」によって運営されている。
グループには7000人の医師が在籍しており、幅広い専門医にアクセスすることが可能。マンハッタン診療所はミッドタウンに位置し、平日午前8時から午後4時まで診療にあたる日本人が多く住むウエストチェスター郡ハーツデール市にある診療所は平日午前9時から午後5時まで診療にあたる。いずれも日本語によるサービスを行っている。
日系医療機関の中で唯一、アメリカ医療施設認定合同機構の認定を受けている。日系医療機関の中では数少ない、アメリカの保険を利用できる。海外旅行者保険も利用可能。ハーツデール診療所では小児科・老年医療科にも対応。人間ドックも実施。
診療所なので入院設備は無い。プライマリケアと内科診療が主体。
出典: https://www.mountsinai.org/locations/msd-japanese-medical-practice/japanese
OSATO MEDICAL CLINIC (大里クリニック)
2001年3月開業。カリフォルニア州ロサンゼルス市にある日本人夫妻が経営する診療所。現在は26人の従業員を抱える総合内科・消化器科専門病院である。当院は家庭医を目指しており、日本人家庭にとってはプライマリーケアフィジシャン(主治医)となっている。
診療は平日の午前9時から午後5時まで。(正午から2時までは昼休み)総合内科・肝臓内科・消化器内科を軸とする。院長の大里雅治医師は日米の医師免許を所持、内視鏡検査数が年間1500件以上の経験を持つ。
女性看護師も在籍しており、婦人科検診・予防接種・健康診断などにも対応可能。また予約の電話から診察まで、日本語で対応可能な診療所である。入院施設は無い。必要に応じて、日本やアメリカの大きな病院へのリファーラル(紹介状)を書くことも可能。
対象は小学生以上の診療。乳幼児の対応はできない。
出典: https://www.osatoclinic.com/
Kuraoka Clinic (大里クリニック)
ジョージア州・テキサス州・オハイオ州に展開する日本人医師の倉岡真紀医師夫妻が経営する診療所。木曜日と日曜日は定休。土曜日は午前8時30分から正午まで、その他は午前8時30分から午後4時30分まで診療にあたる。
0歳児からの小児科・一般内科・人間ドック・婦人科検診・予防接種・ペインクリニック・禁煙外来・サイコロジストや精神科医によるカウンセリング治療も取り扱う。また、ニューヨーク在住の精神科・心療内科専門医と遠隔診察も対応している。美容診療も始めた。
日本語を話すスタッフが多いので、予約の電話から診療まで、日本語で安心して受診することが可能。また、日本の旅行者保険を利用の場合は、キャッシュレスで受信が可能。
Doxy.me診療サイトシステムにより、オンライン遠隔診察を開始
出典: https://kuraokaclinic.com/
アメリカの主要病院企業〜外資系企業編〜
San Francisco Chinese Hospital(サンフランシスコ中国人病院)
アメリカで唯一の中国人病院。カリフォルニア州サンフランシスコ市のチャイナタウンにある。非営利病院。ベッド数は54。設立は1925年。
歴史的には中国人移民がアメリカの病院に、言葉が通じないことが主な理由で受信を拒否されたことから始まる。1899年にチャイナタウンの一角に小さな診療所「オリエンタル診療所」が設立されるも、需要を満たすには不十分だった。アメリカにある中国人組織の中国統合慈善協会が病院建設を立案し、寄付を集め、現在の病院が完成した。
1979年には別館が建設された。本館と別館は耐震的に問題が発生したため、2016年に新しい8階建てのビルが完成。ところが病床稼働率は三分の一程度でしかなく、経営難に陥っている。理由は「地域の医師からの支援が減少したため」とされている。外国人経営の難しさを物語っている。
俳優のブルース・リーは、この病院で生まれている。
出典: http://www.chinesehospital-sf.org
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。