アメリカの医療機器業界は、世界的な医療機器メーカーが手術支援機器から診断機器、在宅医療機器まで幅広く手がける巨大市場です。低侵襲治療やAI診断技術への投資を強める主要企業の動向が、医療現場の変革を後押ししています。
今回は、そんなアメリカの医療機器業界に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて13社の最新情報をお届けしていきます!
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アメリカの主要医療機器企業8選〜ローカル編〜
Medtronic (メドトロニック)
メドトロニックは、1949年に医療機器の修理工場として創業し、現在は世界最大級の医療機器メーカーへと成長した企業である。運営本部を米ミネソタ州ミネアポリスに置き、2015年のアイルランド企業コヴィディエン買収を機に法務上の本拠をアイルランドに構えている。
事業は循環器、ニューロサイエンス、メディカルサージカル、糖尿病の四つの分野で構成される。心臓ペースメーカーの草分けとして知られ、近年はパルスフィールドアブレーションを用いた不整脈治療機器や、持続血糖測定を核とする糖尿病事業が成長を牽引している。
2025年4月期(FY2025)の売上高は約335億米ドルで、前年比3.6%増を記録した。糖尿病事業は6四半期連続で二桁成長を続け、心臓アブレーション領域は約30%増と全社の伸びを押し上げた。
世界150か国以上で事業を展開し、従業員数は9万5000人規模に及ぶ。2025年5月の決算発表では48年連続となる増配を公表しており、安定した株主還元と積極的な研究開発投資を両立させる巨大企業として存在感を保っている。
出典:https://www.medtronic.com/
Abbott Laboratories (アボット研究所)
アボット・ラボラトリーズは、1888年に医師ウォレス・アボットが創業した、米イリノイ州アボットパークに本社を置く多国籍ヘルスケア企業である。研究開発型の医薬品事業は2013年にアッヴィとして分離し、現在は医療機器・診断薬・栄養・確立医薬品の四事業を柱としている。
2024年12月期の売上高は約420億米ドルで前年比4.6%増を記録した。内訳は医療機器が190億米ドル、診断が93億米ドル、栄養が84億米ドル、確立医薬品が52億米ドルとなっている。
成長を牽引するのは主力の医療機器部門であり、持続血糖測定システム「フリースタイルリブレ」は2024年に22.8%の内部成長を達成した。構造的心疾患治療のトライクリップやアミュレットなども好調に推移している。
2020年にはFDAから新型コロナウイルス検査機器の緊急使用許可を取得し、診断分野で存在感を高めた。現在は世界160か国以上で事業を展開し、従業員数は11万人超に及ぶ。2025年1月時点で堅調な基礎事業の成長を示している。
出典:https://www.abbott.com/
Johnson & Johnson (ジョンソン&ジョンソン)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、1886年に滅菌外科用包帯の製造販売から出発した、米ニュージャージー州ニューブランズウィックに本社を置く多国籍ヘルスケア企業である。2023年に消費者向け健康事業をケンビューとして分離し、現在は医薬品とメドテックの二本柱に事業を集中している。
2024年12月期の総売上は約888億米ドルで前年比4.3%増を記録した。うち医療機器を担うメドテック部門は319億米ドルを計上し、営業ベースで6.2%成長した。
メドテック部門は心血管、外科、整形外科、ビジョンの四領域で構成される。近年は心臓ポンプのアビオメッドや、2024年に買収した血管内治療のショックウェーブ・メディカルなど、循環器分野への投資を積極化させている。
世界約250の事業会社を擁し、グループ全体の従業員数は13万人を超える。2025年1月の決算発表時点で、医薬品と医療機器の両輪により安定した成長基盤を維持しており、世界最大級のヘルスケア企業としての地位を保っている。
出典:https://www.jnj.com/
Becton Dickinson & Company (ベクトン・ディキンソン&カンパニー)
ベクトン・ディッキンソンは、1897年にマクスウェル・ベクトンとフェアリー・ディキンソンが設立した、米ニュージャージー州フランクリンレイクスに本社を置く医療機器メーカーである。皮下注射針の製造で先駆的な役割を果たし、現在は世界50か国以上で約7万5000人の従業員を擁している。
2024年9月期の売上高は約202億米ドルに達した。血管アクセスや採血、注射器などの医療必需品を中核に、医薬品送達システムや外科・介入治療機器まで幅広い製品群を手掛けている。
2024年にはエドワーズライフサイエンスから高度患者モニタリング事業を取得し、モニタリング領域を強化した。2025年2月には、バイオサイエンスと診断ソリューション事業(売上約34億米ドル)を独立企業として分離する方針を公表している。
分離後の中核会社は約178億米ドルの規模となり、メディカルエッセンシャルズやコネクテッドケアなど四つの事業に集中する見通しである。2025年時点で事業の選択と集中を進める過渡期にある。
出典:https://www.bd.com/
GE Healthcare (GEヘルスケア)
GEヘルスケアは、ゼネラル・エレクトリックの医療技術部門を母体とし、2023年1月に単体企業としてナスダックに独立上場した医療機器メーカーである。本社を米イリノイ州シカゴに置き、X線管の最大手であったGEの系譜を受け継ぐ画像診断の世界的リーダーである。
2024年12月期の売上高は約197億米ドルで、内部成長率は1%であった。事業は画像診断が89億米ドル、超音波を含む高度可視化ソリューションが51億米ドル、患者ケアソリューションが31億米ドル、医薬品診断が25億米ドルで構成される。
MRIやCT、超音波、造影剤などを主力とし、2024年には約40件の新製品を投入した。医薬品診断部門は9%増と好調だった一方、中国市場の需要軟化が全体の伸びを抑制した。
世界100か国以上で事業を展開し、従業員数は5万人を超える。2025年2月の決算発表時点で受注残高が積み上がっており、調整後EBITマージンも16.3%へ改善するなど、独立後の収益力向上が着実に進んでいる。
出典:https://www.gehealthcare.com/
Stryker Corp (ストライカーコーポレーション)
ストライカーは、1941年に整形外科医ホーマー・ストライカーが設立した、米ミシガン州カラマズーに本社を置く多国籍医療技術企業である。手術用ナビゲーションシステムやインプラント、内視鏡、緊急医療機器など幅広い専門分野で高い評価を得ている。
2024年12月期の売上高は約226億米ドルで、前年比10.2%増と二桁成長を達成した。事業はメドサージ・ニューロテクノロジーが135億米ドル、整形外科が91億米ドルで構成される。
積極的なM&Aによる事業拡大を特徴とし、2025年2月には血栓除去デバイスを手掛けるイナリ・メディカルを約49億米ドルで買収した。これにより成長市場である末梢血管領域への本格参入を果たしている。
従業員数は4万6000人を超え、外科用医療機器では業界随一の定評を持つ。病院用ベッドメーカーから世界クラスの医療機器企業へと成長した歩みを背景に、2025年時点でも新製品投入とM&Aを通じた高成長領域への展開を継続している。
出典:https://www.stryker.com/
Cardinal Health Inc (カーディナル・ヘルス)
カーディナル・ヘルスは、1971年に食品卸売業として創業し、その後医薬品卸へ転換した、米オハイオ州ダブリンに本社を置く多国籍ヘルスケアサービス企業である。1983年にナスダックへ上場し、現在は医薬品と医療製品の流通を主軸に据えている。
2024年6月期の売上高は約2268億米ドルで前年比11%増を記録した。事業は医薬品・スペシャルティ部門が2100億米ドル、医療機器を扱うグローバル医療製品・流通部門が124億米ドルで構成される。
医療製品部門では手袋や医療用衣類などの自社製品に加え、米国有数の放射性医薬品ネットワークを提供している。同部門は改善計画の遂行によりインフレ影響を緩和し、2024年6月期に黒字転換を果たした。
従業員数は4万8000人を超え、米国の病院の多くに医療製品を供給する。2024年8月の決算発表時点で2025年度の業績見通しを上方修正しており、流通効率化と製品事業の収益改善を両立させながら成長を続けている。
出典:https://www.cardinalhealth.com/
Baxter (バクスターインターナショナル)
バクスター・インターナショナルは、1931年に医師ドナルド・バクスターが静脈内治療液の製造販売会社として創業した、米イリノイ州ディアフィールドに本社を置く医療機器メーカーである。輸液や点滴関連製品で長い歴史を持ち、米国の病院医療を支えてきた。
2023年から進めてきた事業再編の総仕上げとして、2025年1月末に腎臓ケア事業をヴァンティブとしてカーライル・グループへ約38億米ドルで売却した。これにより現在は医療製品・治療、医薬品、ヘルスケアシステム・技術の三事業に集約している。
継続事業ベースの2024年12月期売上高は約106.4億米ドルで前年比3%増を記録した。輸液システムや非経口栄養、先端外科製品などを中核とし、ケア連携ソリューションや患者支援システムも手掛ける。
従業員数は約4万8000人で、売上の約半分を米国内が占め、欧州やアジアにもバランスよく展開している。2025年時点で事業ポートフォリオの再構築を完了し、中核領域への集中を進めている。
出典:https://www.baxter.com/
アメリカの主要医療機器企業2選〜日系編〜
FUJIFILM Healthcare Americas(富士フイルム ヘルスケア アメリカズ)
富士フイルム ヘルスケア アメリカズは、富士フイルムグループの北米における医療機器事業を担う中核会社であり、本社を米マサチューセッツ州レキシントンに置いている。親会社の医療分野の歴史は1936年のX線フィルム製造に遡り、1980年代の世界初のデジタルX線撮影システムや1999年の医療画像ネットワーク「シナプス」などで技術を蓄積してきた。
2021年には日立製作所の画像診断関連事業を取得し、MRIやCT、超音波といったモダリティ機器の製品群を大幅に拡充した。現在はX線装置や内視鏡、体外診断、エンタープライズ画像管理まで幅広く手掛けている。
親会社である富士フイルムホールディングスの全体売上は約290億米ドル規模で、うちヘルスケア事業は約62億米ドルを占める。世界で310社の連結子会社を擁し、従業員数は約7万3000人に及ぶ。
写真フィルム技術を医療分野へ応用して成功を収めた日本企業の代表例とされ、2026年時点でも予防から診断・治療までを網羅する事業体制を北米で展開している。
出典:https://healthcaresolutions-us.fujifilm.com/
Terumo Medical Corporation (テルモ)
テルモ・メディカル・コーポレーションは、日本の医療機器大手テルモの米国事業を担う中核子会社である。親会社は1921年、北里柴三郎ら医学者が国産体温計の製造を目指して設立した企業を起源とし、体温計から循環器デバイスやカテーテルへと事業を広げてきた。
1971年に米国へ海外事業所を開設し、現在はコロラド州レイクウッドなどに製造拠点を構える。2011年には血液・細胞技術のカリディアンBCTを買収し、当時の日本の医療機器企業として最大規模の買収により製品群を拡張した。
親会社テルモの2025年3月期(FY2024)の売上高は約1兆362億円で前年比12.4%増、営業利益は約1577億円を計上した。事業は心臓血管が6244億円、メディカルケアソリューションが2112億円、血液・細胞技術が2003億円で構成される。
血液・細胞技術は北米の血漿事業拡大を背景に19%増と大きく伸びた。2025年5月の決算発表時点で世界的な医療需要の拡大を追い風に、米国を重要市場と位置づけながら成長を続けている。
出典:https://www.terumo.com/
アメリカの主要医療機器企業3選〜外資編〜
Siemens Healthineers(シーメンス ヘルスニアーズ)
シーメンス・ヘルスィニアースは、1847年にヴェルナー・フォン・ジーメンスが創業したドイツの巨大複合企業シーメンスを母体とし、独バイエルン州エアランゲンに本社を置く医療機器メーカーである。2018年に上場し、画像診断装置を中心に世界的な事業を展開している。
2024年9月期の売上高は約224億ユーロを記録した。事業はイメージング、ダイアグノスティクス、放射線治療のバリアン、アドバンストセラピーの四部門で構成される。CTやMRI、PET-CTなど最先端の画像診断装置を継続的に投入している。
2021年に買収した放射線治療大手バリアンは第4四半期に10.5%増と好調で、主力のイメージング部門も7.7%増と全体を牽引した。中国市場の弱含みを他地域の成長で補い、通期目標を達成した。
従業員数は世界で約7万人に及び、売上の相当部分を米国市場が占める。2024年11月の決算発表時点で調整後EBITマージンは15.7%へ改善しており、画像診断と放射線治療を軸に高い競争力を維持している。
出典:https://www.siemens-healthineers.com/
Hoffmann-La Roche AG (ホフマン・ラ・ロシュAG)
エフ・ホフマン・ラ・ロシュは、1896年にフリッツ・ホフマン・ラ・ロシュが創業した、スイスのバーゼルに本社を置く世界的ヘルスケア企業である。医薬品と診断の二事業を柱とし、体外診断分野では世界最大手に位置づけられる。傘下には米ジェネンテックやベンタナ、ファウンデーション・メディシン、日本の中外製薬などを抱える。
2024年12月期のグループ売上高は約605億スイスフランを記録した。このうち診断部門の売上は約143億スイスフランで、免疫診断製品への需要増を背景に基礎事業が8%成長した。
2024年には臨床検査室向けの全自動質量分析システム「cobas Mass Spec」を投入したほか、アルツハイマー病の血液検査パネルで高い精度を示すなど、革新的な診断ソリューションを相次いで発表している。
1934年に合成ビタミンCの量産で世界初の企業として名を馳せ、その後がん治療や診断分野で世界的地位を築いた。従業員数は世界で10万人を超え、2025年1月の決算発表時点で新型コロナ関連製品の減少を基礎事業の伸びで補い成長を維持している。
出典:https://www.roche.com/
Philips NV (フィリップス)
コーニンクレッカ・フィリップスは、1891年にオランダで創業した世界的テクノロジー企業であり、本社をアムステルダムに置いている。照明や家電で知られてきたが、現在は経営の主軸をヘルステック分野に移し、2013年には社名から「エレクトロニクス」を外している。
事業は画像診断や治療機器を担う「ディアグノシス&トリートメント」、患者モニタリングの「コネクテッドケア」、電動歯ブラシなどの「パーソナルヘルス」の三部門で構成される。MRIやECG診断装置、患者監視システムなど450種類以上の医療機器を手掛けている。
2024年12月期の売上高は約180億ユーロを記録した。主力の画像診断・治療部門が売上の中核を担い、米国を最重要市場と位置づけている。
一方、睡眠時無呼吸治療器などのリコール問題を抱え、2024年4月には米国での人身傷害関連訴訟を約11億米ドルで和解した。2025年1月の決算発表時点で受注は回復基調にあり、ヘルステック企業としての再成長に取り組んでいる。
出典:https://www.philips.com/
FAQ
アメリカの医療機器業界で今後期待されている成長分野は何ですか?
アメリカの医療機器業界では、デジタルヘルスや個別化医療分野での成長が今後期待されています。
主要なアメリカの医療機器企業にはどのようなものがありますか?
主要なアメリカの医療機器企業にはメドトロニック、アボット研究所、ジョンソン&ジョンソン、ベクトン・ディキンソン、GEヘルスケア、ストライカー、カーディナル・ヘルス、バクスターインターナショナルなどがあります。
アメリカの医療機器企業はどのような規模で事業を展開していますか?
これらの企業は世界150ヶ国以上で事業を展開し、多くは数万人の従業員を抱え、年間収益も数十億米ドルにのぼるグローバルな規模です。
アメリカの医療機器業界で傾向と課題は何ですか?
業界はAIやIoTの導入による診断や治療の精度向上と効率化を進めている一方、規制対応とデータ保護が課題とされています。
日系企業のアメリカ医療機器市場での特徴や役割は何ですか?
日系企業では、富士フイルム ヘルスケア アメリカズやテルモなどがあり、MRIや内視鏡、医療用ディスポーザブル製品などの医療機器開発と販売で重要な役割を果たしています。

