台湾のメディア業界は、テレビ局、新聞社、出版社が多様なコンテンツを提供し、急速に進化しています。
この記事では、台湾の主要メディア企業9社を厳選し、それぞれの事業内容や市場動向を詳しく解説します。台湾でビジネス展開を目指す日本企業にとって、必見の情報です。
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台湾の主要テレビ局・新聞メーカー・出版社9選〜ローカル企業編〜
財團法人公共電視文化事業基金會(PTS)
財団法人公共電視文化事業基金會(PTS)は、1988年7月に設立された台湾の公共放送機関であり、日本のNHKに相当する役割を担っているテレビ局である。公共放送の使命を果たすため、教育や文化をテーマにした多彩な番組を提供しており、特に社会的な問題や教育的価値のあるコンテンツに力を入れている。
英語では「Public Television Service」と呼ばれ、日本では一般的に「台湾公共テレビ」として親しまれている。台湾の台北市内湖区東湖に本部を構え、公共電視法(公共テレビ法)に基づいて設立された公設財団法人であり、文化部(中華民国文化部)の所管の下で運営されている。
2006年7月1日には、台湾の他の公共放送局(中華電視公司、客家テレビ、原住民テレビ、台湾宏観テレビ)とともに「台湾公共広播電視集団」(台湾公共放送グループ)を立ち上げ、台湾全土で公共放送のネットワークを強化した。このグループは、各局がそれぞれの特性を活かしつつ、共同で高品質な番組制作や放送を行っている。
近年では、デジタル技術の進展により、インターネットを通じた動画配信やデジタルメディアの活用にも注力しており、視聴者の多様化したニーズに応えるべく、従来のテレビ放送に加えてオンラインプラットフォームでのコンテンツ提供を強化している。
2025年現在、PTSはその公共放送の理念に基づき、視聴者に対して信頼性の高い情報提供を行うとともに、教育・文化・社会的問題に関連する番組制作を推進しており、台湾のメディアシーンにおいて重要な役割を果たしている。
出典:https://www.pts.org.tw
中華電視公司(CTS)
中華電視公司(CTS)は、1971年に台湾の政府機関である教育部によって設立されたテレビ局であり、台湾の主要な放送事業者の一つとして長い歴史を誇る。台北市大安区に本部を構えており、公共放送を主要株主としている。
CTSは、台湾の三大老舗テレビ局(「老三台」)のひとつとして、台湾電視公司(TTV)や中国電視公司(CTV)と並び、台湾のメディア業界において長年にわたり重要な役割を果たしてきた。これらの老舗局は、台湾のテレビ業界の基盤を築いたとも言える存在であり、特に国民にとって親しみ深いメディアとなっている。
CTSの放送チャンネルは多岐にわたる。主要な放送チャンネルである「華視主頻」では、エンターテインメントからニュース、ドラマまでさまざまな番組が放送されており、台湾国内外の視聴者に広く親しまれている。また、教育、スポーツ、文化をテーマにした「華視教育體育文化台」、ニュースと情報提供を主に行う「華視新聞資訊台」、そして台湾の国会関連の放送を行う「国会頻道1台」および「国会頻道2台」などがあり、視聴者に多様なコンテンツを提供している。
さらに、CTSは日本のアニメを放送することでも知られており、日本のアニメファンをターゲットにした番組編成も行っている。これにより、若年層の視聴者層にも支持されており、国際的なコンテンツの提供にも積極的に取り組んでいる。
2025年現在、CTSはその多様なチャンネル編成を通じて、教育・文化・スポーツを中心とした質の高い番組制作を続け、台湾のメディアシーンにおいて重要な地位を維持している。また、デジタルメディアやインターネットを活用したコンテンツ配信にも注力しており、視聴者のニーズに応える形で進化し続けている。
出典:https://www.cts.com.tw
臺灣電視事業股份有限公司(TTV)
臺灣電視事業股份有限公司(TTV)は、1962年4月に設立された台湾で最初のテレビ局であり、台湾のテレビ業界の先駆者的存在である。台北市松山区に本部を構えており、設立当初から台湾のテレビ業界において重要な役割を果たしてきた。
TTVは、自由時報をはじめとする大手新聞社が一部出資しており、これによりニュース報道や情報提供において高い信頼性を誇る。TTVは、台湾国内外で幅広い視聴者層をターゲットにした番組編成を行っており、ニュース、ドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーなど、多岐にわたるコンテンツを提供している。
2025年現在、TTVはその長い歴史を持つ信頼性の高いテレビ局として、台湾国内で広く視聴されており、デジタル技術を活用したコンテンツ配信にも力を入れている。また、インターネットやモバイル端末向けの配信サービスを提供し、視聴者層の拡大を目指している。TTVは、台湾のメディア業界における先駆者であり、今後もその影響力を維持し続けると予想される。
出典:https://www.ttv.com.tw
民間全民電視公司(FTV)
民間全民電視公司(FTV)は、1997年に放送を開始した比較的新しいテレビ局であり、台湾のテレビ業界において完全民間企業としてスタートした初のケースである。FTVの設立は、台湾のメディア環境において重要な転換点を示しており、当時、台湾の主要テレビ局であった台視、中視、華視がそれぞれ政府や政党、軍などの実質的な支配下にあった中で、FTVは民主進歩党系の民間の力で立ち上げられた。
設立当初は視聴率が伸び悩み、知名度の低さが課題となったが、ドラマやバラエティ番組などのコンテンツが徐々に人気を集め、現在では台湾の主要テレビ局の一つとして、視聴率の面でも高い位置にランクインしている。特に、台湾ドラマに力を入れた放送が好調となり、視聴者層を確実に拡大した。
FTVは、「公正・中立」をモットーとして掲げ、ニュース番組においてはその客観性と信頼性を重視している。この姿勢は、行政院新聞局(台湾の行政機関である新聞局)からも高く評価されており、特にニュース報道の正確さと信頼性において一定の評価を得ている。また、FTVはその番組編成において、社会問題や政治的に敏感なテーマにも積極的に取り組んでおり、視聴者にとって信頼のおける情報源と見なされている。
出典:https://www.ftv.com.tw
自由時報企業股份有限公司(LTN)
自由時報企業股份有限公司(LTN)は、1980年に設立された台湾の大手新聞社であり、台湾の4大新聞の一つに数えられる。台北市內湖区に本社を構え、台湾国内では現在、発行部数が第一位を誇る新聞社である。創設者は台湾の不動産王である林栄三であり、その後、企業は新興財閥「聯邦グループ」の一員として経営されている。発行人は呉阿明が務めており、同社は「台湾優先、自由第一」をスローガンに掲げている。
自由時報は、台湾の主要なメディアとして、その政治的立場においても注目される存在である。中国時報や聯合報が中国本土寄りで、泛藍(国民党支持)路線を取るのに対して、自由時報は台湾本土派の立場を鮮明に打ち出している。特に、台湾の主権や独立を支持する報道姿勢が特徴で、台湾の国内問題や政治的な動きに対しては積極的に独自の視点から報道している。
また、自由時報は紙面だけでなく、インターネットを活用したオンラインニュースにも早くから進出しており、2000年には「自由電子報」というウェブサイトを開設し、オンラインニュースを提供し始めた。この取り組みにより、デジタルメディア市場でも確固たる地位を築き、若年層の読者にも広く支持されている。
さらに、自由時報は英字新聞「Taipei Times」も発刊しており、台湾国内外の英語圏の読者に向けて、台湾に関する最新のニュースや分析を提供している。これにより、国際的なメディアとしての役割も果たしており、台湾の立場を海外に広く伝える重要なメディアとされている。
出典:https://www.ltn.com.tw
聯合報股份有限公司(UDNG)
聯合報股份有限公司(UDNG)は、1973年に設立された台湾の大手新聞社であり、台湾最大の経済紙「聯合報(聯合新聞網)」を発行している。新北市汐止區に本社を構え、グループとして「商業週刊」や「經濟日報」、文化・ライフスタイルを扱う「好讀周報」、北米・タイなどの地域に特化した「北美世界日報」や「泰國世界日報」など、さまざまな出版物を展開している。従業員数は約2,000人を誇り、台湾のメディア業界の中で重要なプレイヤーとなっている。
聯合報は、経済・ビジネス関連の情報を中心に報道しており、台湾の経済活動において影響力のある新聞として広く認知されている。特に「聯合報」や「經濟日報」は、経済・財務情報を深掘りした専門的な記事を提供しており、ビジネスパーソンや投資家から信頼されるメディアとして位置づけられている。
オンラインメディアにおいては、聯合線上股份有限公司が担当し、2000年に設立されて以来、デジタルコンテンツの提供に力を入れている。2020年には、オンライン新ブランド「報時光」がデジタル出版類の推薦ゴールド賞を受賞するなど、その品質と影響力を証明している。また、聯合報グループは、世界新聞網(UDN Global)や「聯合知識庫」など、オンラインコンテンツを多角的に展開しており、台湾国内外の読者に向けて多言語のニュースや情報を提供している。
さらに、UDNGは「UDN TV」や「UDN買東西」といった他のメディアプラットフォームも運営しており、テレビ放送、オンラインショッピング、エンターテインメントコンテンツなど多様なサービスを展開している。これらのサービスは、読者層の拡大を図るとともに、デジタル時代に対応した新しいメディア形態を形成している。
出典:https://www.udngroup.com/#activiti
蘋果日報出版發展有限公司(apple daily)
蘋果日報出版發展有限公司は、香港に本社を構えるメディア企業であり、2003年に台湾で新聞発行を開始した。台湾においては、創刊当初から大きな注目を集め、他紙を超える発行量と、全ページカラー印刷を特徴としていた。また、既存の新聞が15元で販売されていたのに対し、蘋果日報は価格を10元(発行当初は5元)という低価格路線で提供し、読者層を急速に拡大した。この手ごろな価格と高品質なコンテンツが相まって、台湾の新聞市場における重要なプレイヤーとなった。
しかし、紙版の発行は2021年5月14日をもって終了し、5月17日には最終号が発行された。紙版の廃刊は、同年5月に発表されたもので、今後はネット版「蘋果新聞網」に資源を集中させる方針が示された。これにより、インターネットを中心に報道活動を続けることとなり、デジタルメディアの時代に対応する形となった。
さらに、2021年6月24日には、香港の蘋果日報が廃刊となった後も、台湾における「蘋果新聞網」の運営は継続される旨が発表された。これは、台湾の「蘋果新聞網」が壱伝媒(Next Media)の傘下企業であるものの、財務上は独立して運営されていることを意味しており、台湾市場でのメディア運営が独自に行われることが確認された。
現在、蘋果日報は紙版を終了し、オンラインメディアとしての活動に注力しており、台湾におけるデジタルニュースの提供において依然として影響力を持っている。
出典:https://tw.appledaily.com/home/
聯利媒體股份有限公司(TVBS)
聯利媒體股份有限公司(TVBS)は、1993年に設立された台湾初のBS衛星テレビ放送を行うテレビ局であり、台湾で初めてケーブルテレビ放送を開始したテレビ局でもある。また、台湾において初めて24時間放送のニュース番組をスタートさせ、ニュース放送の先駆者としても知られている。TVBSは、台北市內湖区に本社を構えており、台湾のメディア業界において重要な地位を占めている。
TVBSは、ニュース報道における影響力が特に強く、その信頼性と正確さが評価されている。2021年11月には、「卓越新聞賞」を受賞するなど、優れた報道活動が評価された。これにより、ニュースメディアとしての地位がさらに強化され、視聴者からの信頼を集めている。
2025年現在、TVBSはその多岐にわたるチャンネルとコンテンツを通じて、台湾国内での視聴者に広く支持されており、特にオンラインメディアやデジタルプラットフォームを活用した情報配信にも注力している。今後も台湾のメディア市場における主要なプレイヤーとして、影響力を維持し続けることが予想される。
出典:https://www.tvbs.com.tw
中國電視事業股份有限公司(CTV)
中國電視事業股份有限公司(CTV)は、台湾の三大老舗テレビ局のひとつであり、台湾電視公司(TTV)や中華電視公司(CTS)と並ぶ歴史あるメディア企業である。2005年までは中国国民党が経営権を握っていたが、その後、同年に中国時報グループの傘下に入った。この背景から、現在では「親中派メディア」として見なされることが多い。
CTVは、台湾国内外の視聴者に広く親しまれている主要な放送チャンネルを複数持っており、その中で最も重要なものは「中視主チャンネル」で、さまざまなジャンルの番組を提供している。また、「中視新聞台」は24時間体制でニュースを放送しており、政治、経済、社会など幅広い分野の最新情報を伝えている。さらに、「中視經典台」ではクラシック映画や過去の人気ドラマを放送し、懐かしのコンテンツを楽しめる。一方、「CTV Bravo」はエンターテイメントに特化した番組を提供しており、多彩な視聴体験を提供している。
また、CTVは国際的なメディアネットワークとも積極的に提携しており、2017年5月22日には、NHK仙台放送局と相互に制作した映像を交換し、番組内で放送する協定を結んだ。この協定により、CTVはグローバルな視野でコンテンツの交換や制作を行い、国際的な影響力を広げている。
現在、CTVはそのニュース報道やエンターテイメント番組を通じて、台湾のメディア業界における中心的な存在であり、長年にわたって視聴者からの支持を集め続けている。
出典:http://new.ctv.com.tw/Main/
台北在住の台湾人。日本の東北大学で修士号取得後、7年以上IT企業でマーケティングを担当。デジタルマーケティングと市場分析の専門家として、製品の市場導入とブランド戦略を得意とする。