韓国の教育業界は、デジタル技術の活用と多様化する学習ニーズにより急速に進化しています。幼児教育から社会人教育まで、オンライン・オフライン両面で新たなサービスが拡充されているのが特徴です。これらの変化が業界にもたらす影響と、今後の成長戦略とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、統計データを用いて韓国の教育業界の最新情報をお届けしていきます!
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韓国の学校業界〜統計データ〜
1人当たりの月平均の私教育費
学生1人当たりの月平均私教育費支出額。 私教育は小·中·高等学校の生徒たちが学校の正規教育課程以外に私的な需要で学校外で受ける補充教育を意味する。
統計庁による「小・中・高私教育費調査」は塾費、課外費、学習紙費、インターネットおよび通信受講料等の項目が集計されている。学生1人当り月平均私教育費は2012年23万6000ウォンから毎年増加し2023年現在43万4000ウォンに高まった。
同期間、小学生の場合は21万9000ウォンから39万8000ウォンに、中学生の場合は27万6000ウォンから44万9000ウォンに、そして高校生の場合は22万4000ウォンから49万1000ウォンにそれぞれ増えた。
私教育費の支出は所得水準によって大きな差がある。 2023年資料によれば、月所得200万ウォン未満世帯では私教育費として月13万6000ウォンを支出するが、月所得800万ウォン以上世帯では月67万1000ウォンを支出し約5倍の差を見せている。
出典 :統計庁(Statistics Korea)
韓国国内の学校数
少子化が進んでいる韓国であるが、韓国の統計局のデータ見てみると年々学校数は増えている。
韓国の小中高は2018年は11,817校、2020年は11,874校、2022年は11,953校であった。
2022年の統計を学校別にみると小学校が6,317校と一番多く、中学校は3,260校、高校は2,376校と高校が一番少なかった。
地方別にみてみると一番学校が大きい地域は京畿道2,470校、二番目に多いのがソウル特別市で1,311校、三番目に多いのが慶尚南道で981校であった。
一番多い京畿道と慶尚南道は2.5倍近い差をつけている。学校別に地域を見ても京畿道、ソウル特別市、慶尚南道と全体でみたときと同様であった。
出典:韓国雇用労働部
韓国の幼児教育・学習塾業界〜統計データ〜
1か月当たりの平均私教育費
統計庁の調査によると2023年の小中高の私教育費総額は約27.1兆ウォンであることが分かった。
これは2022年度の約26兆に比べて1兆2千億ウォン(4.5%)増加している。2019年のデータまでさかのぼってみてみると2020年に一度前年よりも減少をしたがその後また増加の傾向にある。
さらに私教育参加率は78.5%、週当たりの参加時間は7.3時間で前年比それぞれ4.5%、0.2%、0.1時間増加した。
全体学生の1人当たりの月平均私教育費は43万4千ウォンで前年比5.5%増加であった。
年齢別に見てみると小学校39万8千ウォン(2.5万ウォン、6.8%増)、中学校44万9千ウォン(1.2万ウォン、2.6%増)、高校49万1千ウォン(3.2万ウォン、6.9%増)であった。
出典:韓国統計庁
科目別にみた平均私教育費
一般教科科目別の学生1人当たりの月平均私教育費は英語12万8千ウォン、数学12万2千ウォン、国語3万8千ウォン、社会·科学1万9千ウォンの順で支出が多く、2023年比を見ると国語(11.1%)、社会·科学(8.2%)、数学(5.6%)、英語(3.8%)ともに増加していた。
学年別では小学校5年生の英語(13万1千ウォン)、中学校3年生の数学(17万4千ウォン)、高校1年生の数学(19万4千ウォン)でそれぞれ支出が多く、小学生は数学よりも英語を重定期に勉強しているのに対して、中学生・高校生が英語よりも数学の学習に比重を置いているということが明らかになった。
また小学生においては趣味や教養などを含むその他の私教育の費用が一番高いというのも特徴のうちの1つである。
出典:韓国統計庁
韓国の保育業界事情〜統計データ〜
幼稚園数の推移(2013~2023)
10年間の幼稚園数の推移を調査したところ、2017年までは毎年増加していたが、同年を起点に継続的な減少傾向にあることが分かった。
公立・私立の設立類型別にみると、国公立幼稚園では変化は見られなかったが、私立にあたっては、減少傾向にある。これは、政府の幼児教育に対する監督体制を強化する政策によるものであると見られる。
公立の単設幼稚園は持続的に増加しており、公立の併設幼稚園※は増減しながらも一定の数を維持していたが、2017年から持続的な増加傾向にある。
一方、私立幼稚園全体としては、2016年をピークに減少傾向に転じた。経営主体別でみると、法人経営型幼稚園は2019年まで、個人経営型は2016年までそれぞれ増加を続け、以降減少に転じた。
2022年の幼稚園数は全体で8,562園であり、その内国公立幼稚園が5,116園で全体の59.8%を占め、私立幼稚園が3,446園で全体の40.2%であった。これにより、国公立幼稚園は私立幼稚園の1.5倍の数に上ることが明らかとなった。
出典:教育部
放課後過程のプログラム別参加比率
3000人の児童を対象に放課後過程※のプログラム参加率を調べたところ、プログラム中最も授業参加率が高かったのは、体育であり66.6%に上った。
ひと月当たりの平均費用は1.5万ウォンであった。次に参加率が高かったのは英語の授業で66.1%を占めた。
ひと月当たりの平均費用は、3.96万ウォンであり、プログラム中もっとも高額であった。もっとも、標準偏差が5.95万で月平均費用も幼稚園ごとに異なるということも読み取られる。
参加率順位は、次に音楽(51.8%)、美術(30.9%)、ハングル(28.3%)の順であった。また、5点スケールで満足度調査を行ったところ、おおよそ4点以上であり、高水準であることが分かった。
※幼稚園などで正規過程の後に実施される任意参加のプログラム
出典:教育部
韓国の語学学校業界事情〜統計データ〜
9歳以下「イングリッシュレーテ」 受験者数推移
英語教育を手掛けるユンイングリッシュスクールは2019年1月から2023年12月までの計5年間の英語診断評価データを分析した。
未就学児から高校3年生までの13万5709件の診断評価を分析したところ、9歳以下の受験者数は過去5年間で大幅に増加した。9歳未満(未就学児~小学2年生)の受験者数を2年周期で分析すると、2019年△6,547人、2021年△7,059人、2023年△7,567人と、受験者数は500件ずつ着実に増加している。
就学前・学年全13校に占める割合は、2019年の23.3%から2021年は25.4%、2023年は26.0%と、5年間で2.7ポイント増加した。
同スクールの担当者Hは、「子どもたちが英語教育を始める時期が早くなるにつれて、子どもたちが英語レベルテストを受ける年齢も若くなっているようだ。」と述べた。
学年別では、小学校4年生が過去5年間で最も多く、22,540人(16.6%)、次いで、小学校3年生が21,318件(15.7%)、5年生が20,867件(15.4%)であった。月別に見ると、新学期が始まる3月に受験者数が最も多いことがわかった。
受験者数が最も多かったのは3月で1万6471人(12.1%)、次いで2月が1万5548人(11.5%)だった。
次いで、1月は1万4083人(10.4%)、8月は1万1590人(8.5%)、12月は1万1313人(8.3%)と続いた。
出典:ユンイングリッシュスクール
英語学校教師数と年齢層の推移
20代から30代の教員数は、2019年の14.5%から2020年は18.1%、2021年は20.1%、2022年は20.1%、2023年は21.5%と、年々増加している。
年代別にみると、20代教員の割合は2019年の4.9%から今年は5.9%へと1.0ポイント増加し、30代教員の割合は9.6%から15.6%へと6.0ポイント上昇した。
特に、マンツーマンオンライン英語授業においては、COVID-19のパンデミック時に変化の度合いが顕著だった。
2019年は22.9%だったが、今年は4年前から20.1ポイント増の43.0%に増えた。COVID-19のパンデミックにより非対面学習が急速に広がった2019年から2020年の間に、20代から30代の教師の急速な流入は11.3%ポイントと最も大きな増加を示した。
この間、20代教員の割合は9.9%から12.2%へと2.3ポイント増加し、30代教員の割合は13.0%から30.8%へと17.8ポイント増加した。
関係者は「MZ世代の教員は、在宅勤務や週2~3日勤務できる柔軟な職場環境に最も満足している」とし、「また、自習室や学習塾などの個人教育事業で、将来起業の必要性が高い人にとっては堅実なキャリアになり得ることが、2030年に教員比率が上昇する背景にあるようだ」と述べた。
出典:ユンイングリッシュスクール
韓国の資格・社会人教育事情〜統計データ〜
2022年 国家技術資格 受験申込の上位10位
下図は2022年の国家技術資格の内、受験申込数が多かった上位10の資格試験とその申込数を示している。
上位群にはコンピュータ関連の資格や技能士、技師サービス等の資格試験が入っている。上位10位までの申込数の合計は2,085,359である。
最も多くを占めたのはコンピューター活用能力1級で、これには593,864人が申し込んでおり、これは上位10位の全体でも28%を占める。
また、2位には同資格の2級試験がランクインし、申込者は399,032人、上位10位に占める割合は19%である。これらより、コンピューター活用能力の資格へ需要が圧倒的に多い事が分かる。
次いで3番目に多かったのはフォークリフト運転技能士の試験で、235,451人が申し込み、上位10位の11%を占める。
以降は情報処理技師、韓食調理技能士、掘削機運転技能士、産業安全技師、電気技師、ワードプロセッサー、製菓技能士の順で申込数が多かった。
出典:韓国統計庁KOSIS(韓国産業人力公団)
2022年 年齢別 国家技術資格の取得者数
下は2022年の国家技術資格取得者を年齢別に集計したグラフである。資格取得者数の内、最も多くを占める年代は25~29歳であり8,172人が該当する。
次いで多かった年齢は20~24歳の6,853人である。このことから、他年代と比較し20~29歳の若年層が国家技術資格の取得に積極的なことがわかる。
これは就職活動に向け資格取得が進んでいることが理由と思われる。また3番目に取得者数が多かったのは15~19歳であり、専門学校への進学準備や将来の就職に備え、比較的国家資格への需要が高いことが理由であると推察される。
そのほか30~34歳は4,329人、35~39歳は2,078人が資格取得をしており、就職後も自己啓発を続ける意欲が高いものと想定される。一方、40歳以上では、年齢が上になればなるほど取得者数が少なくなる傾向が見て取れる。
出典:韓国統計庁KOSIS(韓国産業人力公団)
ソウル在住の韓国人。日本での在住経験は25年。日本の有名大学を卒業し、大手シンクタンクの正社員及び経営コンサルタントとして勤務。多くのプロジェクトに携わり、ビジネス戦略とイノベーションの分野で活躍。